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【ことなら’23秋】歴史巡礼~ 元興寺とならまち(奈良市)/極楽往生願う信仰の地

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 ならまちは奈良市の中心市街地の南東部、世界遺産・元興寺の旧境内を中心とする地域。中世には「南都」や「奈良」などと呼ばれていたという。

 

中世の元興寺とならまちの成り立ち

 奈良時代には、現在の「ならまち」のほぼ全域が元興寺の境内だった。南都七大寺の一つとして栄えた大寺院だったが、平安時代に都が京へ移ったことで衰退。伽藍(がらん)は縮小したが中枢部は存続し、智光曼荼羅(ちこうまんだら)を中心とした浄土信仰の霊場として信仰を集める。

 

 1181年、平家の南都焼き討ちで東大寺や興福寺は大きな被害を受け、大仏殿も焼失。その後、両寺を中心に復興が本格化する中、全国から集められた仏師や大工、工芸師などの職人が、東大寺西側や興福寺南側(現在のならまち)に住むようになり、徐々に町が形成されていったという。

 

元興寺の極楽坊(本堂)内陣

 

 

中世元興寺の信仰

 智光曼荼羅は奈良時代の元興寺の僧、智光が感得した浄土世界を描いたもの。平安時代後期には僧坊の一部を改造してこの曼荼羅が安置され、やがて極楽坊(極楽堂)と呼ばれるようになっていく。それが現在の本堂だ。智光曼荼羅を中心に、極楽往生を願う人々が念仏講をつくるなどして信仰を深めたとされる。元興寺で見つかった「番衆札」には世話役とその居住地が記されており、近隣の人々が同寺を支えていたことが分かる。

 

 極楽坊内陣の柱には、念仏講の費用を賄った寄進状が刻まれており、現在も見ることができる。

 

極楽坊内陣の柱に刻まれた寄進状

 

 

法輪館の展示品

 境内の法輪館には、中世の庶民信仰を伝える文化財が数多く展示されている。人々の結縁によって造られた木造千体仏や紙に押された印仏などで、庶民の信仰の証しがまとまって残るのは珍しい。その大半は本堂の屋根裏から見つかったという。

 

結縁によって造立された木造千体仏

 

地蔵信仰

 戦国時代になると戦で亡くなる人が増え、供養のための地蔵信仰も盛んになっていった。石に名前を彫った石塔も数多く造られた。

 

 境内南側の浮図田(ふとでん)には、中世から江戸時代の供養石造物約1500基が祭られている。地蔵信仰の伝統を受け継ぐ行事として、毎年8月23、24日には「地蔵会」が営まれる。奉納者の願いを書いた多数の灯明皿が並び、明かりが石仏や石塔を幻想的に照らし出す。

 

◆元興寺

《住所》奈良市中院町11

《拝観時間》午前9時〜午後5時(入門は午後4時半まで)

《拝観料》大人500円(秋季特別展期間中は600円)、中高生300円、小学生100円

《問い合わせ》電話0742(23)1377

 

 

室町時代の様式を伝える今西家書院

 興福寺大乗院家の坊官を務めた福智院氏の居宅。国重要文化財。室町時代初期の書院造りを今に伝える。1978(昭和53)年には解体修理も行われ。創建時の部材を生かしながら貴重な建物を維持してきた。

 

室町時代の様式を伝える今西家書院(上)と書院の内部

 

 書院は「上段の間」のことで、接客や謁見(えっけん)、会議などに使われた。上段、中段、下段と各部屋に段差があり、書院の間が一番高く設計されている。客をもてなす精神を大切にしていたことがうかがえる。

 

 戸外からの雨や風を遮断し、目隠しでもあった蔀戸(しとみど)や2枚開きの「諸折戸(もろおれど」、「猫間障子(ねこましょうじ)」など、建具の細部まで繊細なこだわりが感じられる。畳に座って眺める庭は奥行きや陰影が感じられ、季節ごとに美しい景色を見渡せる。秋はヤマモミジが色づくという。

 

 案内係による口頭での説明や喫茶は随時。書院の中でゆったりとした時間を過ごせる。

 

◆今西家書院

《住所》奈良市福智院町24の3

《開館時間》午前10時半〜午後4時(受け付けは午後3時半まで)

《休館日》月・火・水曜日と夏期・冬期・貸切時

《見学料》大人400円、学生・70歳以上350円、未就学児は無料

《問い合わせ》電話0742(23)2256

 

 

ならまちのお勧め土産

 

砂糖傳(さとうでん) 増尾商店 砂糖本来の風味を生かして

 170年の歴史を誇る、1854(安政元)年創業の砂糖屋。店舗は当時の町家建物をそのまま使用している。奈良県産の素材を使用した「ラッキーディアグミ」(税込み324円)は鹿の形をしたハードなグミ。イチゴやブルーベリーなどしっかりとしたフルーツ味で、お土産にぴったりだ。

 

 

 砂糖本来のナチュラルな甘さがうれしい14種類の「奈良こんふぇいと」は大和茶味が人気。お寺や仏像、天平柄など奈良らしい絵柄の箱を選べるのもうれしい。素材の風味を生かした「御門(みかど)米飴」もある。

 

 ポルトガルから持ち込まれた金平糖を日本で最初に食べたのが織田信長とされ、当時の金平糖を再現した「信長こんふぇいと」も販売中。

 

◆砂糖傳 増尾商店

《所在地》奈良市元興寺町10

《営業時間》午前9時〜午後6時

《定休日》年末年始

《問い合わせ》電話:0742(23)2307

 

 

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