内藤其淵は江戸後期の大和で活…
内藤其淵は江戸後期の大和で活躍した絵師。鹿の絵の名手で、其淵が屏風に描いた鹿の絵を本物と思った雄鹿が突き破ったとの逸話が残る。
其淵をはじめ知られざる絵師や画家を紹介する特別展「大和の美~古都を彩った絵師たちの競演」が3月9日まで、県立美術館で開かれている。大和(奈良)の絵画史にスポットを当てた展覧会は珍しい。
大和では中世、平家の焼き討ちからの社寺復旧のために南都絵所が創始される。春日信仰の流行もあり、社寺を中心に信仰と結び付いた独自の美の文化が生まれた。
近世には、郡山藩主となった柳沢氏が武家文化をリード。さらに奈良町などでの商家の台頭によって、絵師たちの活躍の場は広がった。
近現代になっても、多くの画家や文化人たちが奈良に移り住み、奈良洋画界が形成された。こうした歴史は、国の始まりの地であり、豊かな自然を持つ奈良の地域性と無縁でないだろう。
奈良の歴史や文化は、ともすれば古代ばかり注目を集める。しかし、中世以降もわが国の文化をリードしてきた歴史があることを忘れてはならない。(法)