教育

新聞を教材にして学ぶ力 探求する力を育もう - NIE(教育に新聞を)の取り組み

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デジタル化にも対応 新聞は生きた教材

 新聞を学校教育の生きた教材として活用するNIE(ニュースペーパー・イン・エデュケーション=教育に新聞を)は、1930(昭和5)年代に米国で始まった。日本では1985(同60)年、静岡県で開かれた「第38回新聞大会」で提唱されて以降、教育界と新聞界が協力し、全国に取り組みが広がった。今年で40年となる。奈良県内でも新聞記者を講師に招いた出前授業などを展開。そんな中、奈良市の市立小学校で、新聞社以外に大手通信会社との共同授業が開かれるなど複数の業種とのイベントも企画された。県NIE推進協議会は学校での新聞活用に向けた教職員研修を実施。講師育成にも力を注ぐ。奈良新聞社も昨年9月から新聞紙面を教育に役立ててもらおうと、デジタル教育サイト「学びの種デジタル」の配信をスタートさせた。教育に新聞を組み込む新たな動きを紹介する。

 

 

情報技術の未来を予想

NTTドコモと共同授業

 児童の情報技術の知識を広げるイベントの一貫として、ドコモCS関西奈良支店(奈良市)は奈良新聞社と共同で2023年12月4日、同市朱雀6丁目の市立朱雀小学校に出向き、出張授業を実施した。同校の6年生約60人(当時)が、オンラインのリモート社会見学を体験した。

 

 NTTドコモは子どもや保護者らを対象にした教育サービス「comotto(コモット)」を提供。全国各地で親子で学べる「金融教育」や小学生向けの無料オンライン授業などを展開してきた。

 

 今回は同社の社員らが小学校に出向いて最新の通信技術や携帯電話の歴史、災害時の対応などを紹介するほか、その授業の成果を深めるために壁新聞作りも行った。

 

NTTドコモとの共同授業の様子=2023年12月4日、奈良市朱雀6の市立朱雀小学校

 

▷追従ロボ

 授業の中では、AI(人工知能)を搭載した自律走行型ロボット「temi(テミ)」が登場した。テミは高さ1メートルで、「顔」に当たる部分にタブレット端末が備え付けられている。カメラやマイク、スピーカーを通して周辺の様子を見聞きしたり、双方向に会話したりできる。

 

 追従センサーも備えており、児童はその機能を体験した。児童の後ろを素早く追いかけるテミのスムーズな動きに「すげえ」「速っ!」など歓声を上げ、テミの活用方法などを模索した。

 

▷リモート社会見学

 大阪南港にある同社の西日本オペレーションセンターには、別のテミが映像を生配信。校外での社会見学と似た体験を学校にいながらできる「リモート社会見学」を実施した。

 

 同センターでは安定した通信を提供できるよう、オペレーターが24時間365日、ネットワークシステムの監視・措置を行っていることを説明。災害時の対応方法などもクイズ形式で解説し、児童らは防災についての学びを深めた。

 

 また過去に同社から発売された携帯端末を紹介。「ショルダーフォン」や「ポケベル」など、児童らが初めて見る機器の実物も登場し、関心を集めた。

 

▷新聞づくり

 授業後、奈良新聞社の記者がニュースを的確に伝える記事の書き方として、結論から書く「逆三角形」や「5W1H」といった構成を紹介。新聞記事の見出しの意味や付け方も説明した。

 

 児童は5、6人で1枚の壁新聞づくりに挑戦。テミの特徴や魅力、活用方法などをまとめようと、見出しや記事、イラストのレイアウトに悩みながら鉛筆を動かした。

 

▷壁新聞

 完成した壁新聞には将来のロボットの活用方法や予想図などが掲載された。あるグループの紙面には未来のテミの姿が描かれ、「人手不足の社会にロボットは欠かせません。いろいろなロボットが活躍すると思います」と結ばれていた。

子どもたちが制作した壁新聞

 

 

学校現場での実践

教職員の育成

 葛城市立当麻小学校で昨年8月7日、学校での新聞活用に向けた職員研修が開かれた。県NIE推進協議会の辻村信俊・事務局長が「はがき新聞」などの実践例や効果を紹介、教職員12人が複数の新聞を回し読んで興味ある記事をまとめる「まわしよみ新聞」作りに挑戦した。

 

 県NIE推進協議会は、県内の実践指定校7校(五條市立五條南小・五條小・五條西中・葛城市立当麻小・忍海小・新庄中・県立香芝高)に新聞を提供。学校で活用してもらい、児童生徒の読む力▽書く力▽発信する力▽コミュニケーション能力―などを高める活動を進めている。

 

 この日の研修では4人ずつのグループに分かれ、奈良新聞や全国紙など5紙を回し読み。各自が気になった記事をグループ内で発表し、切り抜きを一枚の模造紙に貼り合わせて見出しやコメントを添え、個性あふれる壁新聞を制作した。

 

 辻村事務局長は「まわしよみ新聞」の効果として、新聞が世間語りや対話のコミュニケーションツールになる▽情報全体を見渡し、世界観を広げられる▽ものづくりの共同体験▽編集力が身に付く▽どこでも誰とでもできる―などを示し、「新聞などの活字は学力をつける基本」として無理のない継続を呼びかけた。

 

 毎朝新聞を読むという真田昇教頭は、「新聞を仲間と読み合い、プライベートが垣間見えて楽しかった」。6年の担任教諭は「新聞は文字を入れ過ぎず、イラストや見出しを入れると見やすくなると実感した。児童へのアドバイスに生かしたい」と話した。

 

研修で「まわしよみ新聞」作りに励む教員ら=昨年8月7日、葛城市染野の市立当麻小学校

 

気になった記事を発表し合う教員ら=同

 

 

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