株式会社桶谷ホールディングス お客さま第一の精神 - お客さまの喜びがわが社の喜び
株式会社桶谷ホールディングス
インタビュー:桶谷 晃弘 代表取締役社長
お客さまの喜びがわが社の喜び
昭和9年に酒の専門店として大阪市生野区で創業した桶谷ホールディングスは戦後、奈良吉野で事業を再開し、現在は全酒類・食品業務用卸の「桶谷」と酒・食品・生鮮スーパーの「ボトルワールドOK」の2本柱を主軸に7つのグループ会社で約9000件の取引先を持ち、グループ連結決算454億円の規模を誇る企業に成長した。成長の裏には「お客さま第一」という創業者から守られてきた「桶谷マインド」があった。今後、物流事業や生鮮食品小売りにも挑戦しようとする桶谷晃弘代表取締役社長に経営理念や今後の展望などについて話を聞いた。
お客さま第一の精神
酒で会社を大きく
「貴社のコンセプトや大事にしている精神について教えてください」
経営理念でもある「お客さま第一」の精神を常に大事にしています。これは祖父である創業者の思いで、私が子どもの頃から「桶谷のマインド」として叩き込まれました。
また、創業者から父である現会長、そして私に引き継がれているのは「酒で会社を大きくしてほしい」ということ。当社は酒類販売から始まったので、原点は「酒」にあるわけです。今後も酒と食に関わる事業を展開していきたいと考えています。
お客さまの喜びが我々の喜び
「ご自身が思う「お客さま第一」とは」
顧客はもちろん、私たちと関わるすべての方々に感謝をすること。祖父からの教えですが、会社としても今でも一番大切にしていることです。
祖父は大変厳しい人でした。私自身、小学4年生頃から集金や配達などを手伝っていましたし、高校生になるころには行商なども行い、商売人としてのノウハウを仕込まれました。そんなこともあり、当時の私は祖父が嫌いでした。
しかし、一方で祖父はご近所や業者の方々など周りからとても愛されていることは幼少のころから感じていました。商売には厳しい人でしたが、根本は「人を大事にし、人を愛する」人だったのです。
「信用が大事、絶対に嘘を付かず、顧客はもちろん、メーカーなど当社に関わる全ての方に感謝の気持ちを常に持つのが当たり前だ」と教えこまれました。
あらゆる人達の支えがあるから商売ができる。とにかく誠実に、お客さまから信頼を得て、お客さまの喜びが我々の喜びと感じて臨むことを大切にしています。従業員が桶谷で働いていて良かったと思ってくれる、またその家族が自慢してくれる企業にしたい、またこのマインドを従業員全員が持ってほしいと思います。
期待以上の提案を
「ご自身が考える信用、信頼とは」
どれだけ相手の立場に立って考えられるかだと思います。相手の望む期待以上のアクションが起こせるか、例えば依頼事の期日がまだ先でも、すぐに応えることが先方の感動につながると思います。そういった積み重ねで信頼を得られると思います。そのために常にお客さまの「期待値」のレベルを知っておく必要があります。
私自信も大事にしていることは「お客様といかに長い時間接するか」です。長く接することで相手の状況や課題などが見え、期待以上の提案もしやすくなります。特に営業の社員に実践してほしいので会社内の業務の効率化を計っています。例えば、資料や企画書、飲食店様のメニュー作成等にに時間を取られていましたが、制作部等の専門部署を設けたことで資料やメニュー等の質も向上し、営業に専念できる時間が増えました。
創業の精神で、人材育成、協業に挑戦
酒のプロフェッショナルを育成
「社員教育はどのようにされていますか」
「酒」で会社を大きくという観点から、「酒のプロフェッショナル」の育成に力を入れています。
まず私が利酒士(ききざけし)と焼酎アドバイザーの資格を取得して社内勉強会を開始しました。今は役員、社員が引継ぎ、現在ではソムリエ資格を持つ社員31人、酒ディプロマが3人、利酒師が196人、焼酎利酒師も176人になりました。これは当社にって有力な武器となり、名刺に「ソムリエ」と記載されているだけでホテルやレストランのソムリエさんと自信を持って話ができるようになったのです。
当社のワインソムリエチームの講習会には日本に1人しかいない「マスターオブワイン」の称号を持つ大橋健一さんが来てくれています。
また、2019年からグループ全社のサポートを行う人事部を設け、新人研修から管理職、メンター研修などを開始し、経営理念やマナー、心構えなどを勉強できる機会を設けたことにより、社員間のコミュニケーションも増えました。最近では店舗従業員向けにお客様の気を引くPOPの書き方など「売る力」が身に付く「ネタ販売マイスター」の資格取得などにも力を入れ、現在50人以上が取得しています。
そして、まじめに一生懸命頑張って成長し、結果を出してくれた社員とそのご家族に幸福と喜びを保証できる企業を目指し、2021年4月より人事制度を新たにしました。社員全員にキャリアパスを明確に示し、すべて能力、結果で評価するというもので、多くの社員のモチベーションアップにつながったと思います。
大胆なチャレンジを
「顧客、取引先、市場などで起きている環境変化をどう感じていますか」
ここ1~2年のコロナ禍での状況では、ボトルワールドOKは巣ごもり需要もあって大変好調で堅調な推移が続いていますが、業務用酒販部門は大きな影響を受けました。第5波が落ち着いた後もグループ全体の売上はコロナ前の80%程度にしか回復していません。 しかし、ピンチはチャンスの入口。常識にとらわれず大胆にチャレンジすることも重要です。
現在はスマートフォンひとつで買い物ができる時代で、コロナ禍で一層その活用は増えました。しかし、こんな時代だからこそ人と人とのコミュニケーションで生まれる信頼感や温かみが重要になる。だからこそ当社は自社および飲食店等得意先さまのリアル店舗を通じてより良い商品サービスを提供したいのです。
そのひとつの事例として、コロナ禍で営業社員の手が空いた時期にSNAP(最高品質の生ビール溢れる笑顔プロジェクト)活動を推進しました。これは、「お店でおいしい生ビールを飲みたい」というお客様視点から生まれたプロジェクトです。生ビールはグラスの洗い方一つで味が変わるほど繊細で、正しい入れ方でとてもおいしくなるもの。お得意先のお店に出向き、社員が生ビールのアドバイスを行い、最高品質の生ビールを提供できるお店を増やしていきました。こうしたお店の価値を上げるお手伝いもしています。
また、今後は若者の酒離れを解消するためにも「おもしろい」と思われるお酒の飲み方や、料理との相性が良いお酒のアドバイスなどまだまだ一般的には知られていないことを発信していければと思います。
協業が業界を改善
「物流と生鮮食品にも力を入れていきたいとのことですが」
酒類の販売は利益率が低いため、その中でコストが一番かかる物流に注目しました。
最初に取り組んだのがグループ内の配送をまとめる共同配送です。次は、まだ具体的な取り組みは開始しておりませんが、他社の酒屋さんからの配送を請け負うことで自社と共同配送を行い、お互いに効率化とコストダウンを期待できます。
中小の飲食店はセントラルキッチンを持つことが難しく、食材の配送にコストがかかるという課題がありましたが、酒の配送と一緒に食材も当社が共同配送することでお客さまの課題解決につながります。酒業界は先細り傾向にありますが、協業することで業界自体を良くできると信じています。
ボトルワールドOKでの生鮮食品に関しては今まで全てアウトソーシングでしたが、事業会社のゼンキョウでは野菜の扱いがあるのでこの経験は活かすべきだと考え、グループ内へのシフトに挑戦していくところです。お客さまを呼び込むフックに生鮮食品を使い、全体としてボトルワールドOKの顧客を増やすグループ内シナジーを期待しています。
12月16日にオープン。生鮮食品に力を入れた「生鮮&業務スーパー ボトルワールドOK 新庄高田店
SDGsプロジェクトチームを結成
「地域貢献など、企業と社会への関係ついてどうお考えでしょうか」
当社は吉野が創業の地で、登記上の所在地はすべて吉野にしています。企業を育ててくれた吉野を大切に思っています。私は毎月1日は吉野に戻り、仏壇、神棚、お墓参りに欠かさず行くようにしています。
SDGsに関しましても取り組むべきだと考えています。今年の1月に若手社員が中心となって自発的にSDGsプロジェクトチームを結成してくれました。来年を当社のSDGs元年とし、各事業会社で目標を定めて本格始動し、そこで得た利益や削減できた経費の一部を寄付すること等を考えいます。また、平成4年から始めた空き缶回収も今後も続けていきたい。
今後は、ボトルワールドOKの青果売り場で4Hクラブ(農業青年クラブ)の若手農家が地元奈良で作り育てた野菜を販売するコーナーをつくる活動なども考えています。
企業の発展は人が重要
「企業がさらに発展するためには」
一番に「人」だと思います。「桶谷のマインド」をしっかり定着させ、お客さまのために何ができるかを考えて、お客様の喜びを自分の喜びと感じてくれる人材の発掘が重要になります。
-ありがとうございました。