インド発祥ではあるが、日本の国民食とも…
インド発祥ではあるが、日本の国民食ともいわれるカレー。最近はご当地レトルトカレーが人気を呼び、本県のジビエカレーをはじめさまざまな味が楽しめる。
筆者が好むレトルトの一つに新宿中村屋のインドカリーがある。なぜカレーではなくカリーなのかを「中村屋のボース」(中島岳志著、白水社)を読んで知ることができた。
英国植民地のインドで独立運動の闘士であったラース・ビーハリー・ボースは1915年に日本に亡命、当時は日英同盟下にあったため官憲に追われるが、とある縁から東京新宿にある中村屋に身を隠す。
そこで店に伝授したのが、インドから英国経由の日本カレーでなく本場のカレー。こだわりがあるから、あえてカリーと称したとある。
ボースは中村屋の娘と結婚。悲願のインド独立のため当時の日本の軍部と共闘するが、軍部のアジア解放は建前であり、やがて戦争の嵐に巻き込まれていく。
戦後、ほとんど忘れ去られていたボースの生涯をたどり、ナショナリズムと大東亜戦争の正体を深く考えさせられる1冊。カリーの味は辛くて奥深い。(栄)