「飛鳥美人」で知られる高松塚古墳壁画(…
「飛鳥美人」で知られる高松塚古墳壁画(7世紀末~8世紀初)は今月、発見から50年を迎えた。その半世紀は考古学上の輝かしい成果とともに、遺跡の現地保存の原則を守れなかったという負の歴史も併せ持つ。
壁画はカビなどで劣化し、文化庁は平成19年、石室を解体し石材ごと壁画を搬出。約10年かけて壁画の汚れなどを除去した。
文化庁は当初、壁画を修理後、再び現地に戻すとしていた。しかし、その後に技術的な理由から「当分の間は墳丘に戻さず保管する」と方針変更し事実上断念した。
法律の規定はないものの、遺跡は元の位置で保存されることが原則だ。石室解体はこの原則から逸脱するものであり、専門家の間では今も根強い批判がある。
現地保存の原則は、乱開発などから遺跡を守るために大切な理念だ。一方で、現在の保存科学では、現地で壁画を守れないという現実もある。
文化庁は明日香村にある現在の仮設修理施設付近で、壁画の保存公開のための施設を整備する方針を示した。飛鳥美人たちはこれからも文化財保存の理念と現実を問う貴重な証人となるだろう。(法)