質問「1人カラオケを楽しむ高校生の娘の将来が心配です」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2025年2月19日)
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【質問】うちの高校1年生の娘が昨日、学校帰りに1人カラオケに行ったといって喜んで帰ってきました。将来正常な人間関係をつくれるのか心配です。時代の流れと捉えた方がいいのでしょうか。(50代、男性)
【回答】辻 明俊(興福寺執事長)
【我知なヒント=社会との関わりを影から見守る】
私の知り合いにも1人でカラオケに行く人はいますよ。人目を気にせず好きなだけ歌って、ストレス発散にもなるからいいんだとか。そういや、「おひとりさま」なんて言葉がありましたよね。1人でできること、できないことを線引き(例えば焼肉や遊園地など)して、共感したり、できなかったり。私自身は集団行動や皆でわいわい騒ぐのは苦手なので、むしろ1人の方が心地よく感じます。まぁ、単に社交性がないだけかもしれませんが(笑)。
コロナ禍の最中にあっては、集まらない、集めない、人との接触を極力避けるのが基本でした。みな、ソーシャルディスタンスを従順に守り、飲食店のテーブルにはアクリルパネルが置かれ、外出先ではマスク着用を徹底。ほんの数年前なのに、異世界の出来事のように感じます。
およそ30年前、オーストラリアに1年間留学していました。そのときにバックパッカーの楽しさを覚え、長期休みの度に長距離バスを利用して、オーストラリア国内を旅しました。留学しておよそ3カ月がたったころ、住んでいた街からバスを乗り継ぎ、マルチドールという場所まで10時間ほどかけて出かけました。
なんでそこに行ってみようと思ったのか、まったく記憶にないのですけれど、ホストファミリーのお父さんが得意げに予約してくれた宿は、なんと相部屋、共同キッチンという、日本でもすっかりおなじみになっているゲストハウスでした。
広い部屋にずらっと並ぶベッド。枕元に散らばる本や服。修学旅行の雑魚寝~~ ぽかんとなったのはほんの一瞬。これから1週間どうすんだ、ご飯はどうすんだ、不安に青ざめていると、いろんな国の旅人が、買い物やキッチンの使い方、食材の保管方法などを教えてくれました。ビリヤードにダーツを覚えたのもその頃でしたね。とにかくオロオロしている私を毎日誰かが助けてくれました。今にして思えば、英語もカタコト、ほとんど理解できないのによく行った、とほめてあげたいぐらいです。
私たちの社会はさまざまな関係が手を取り合う網のようなもの。単独で存在しているようでも、どこかでつながっているのです。コロナ禍では人と人の接触が感染拡大の原因にもなりましたが、人と人が助け合うことでしか、感染を止めることはできなかったのも事実です。一見バラバラに過ごしている社会でも、困っている人を誰かが支援し、独占せず譲り合うというような、他者との一体感や支え合いを考えるきっかけにもなったはずです。
時代の流れとは、ふり返った時に気づくものであって、流れている渦中にあっては分からないこともあるでしょう。だからこそ、ときに親が声をかけ進む方向を教えてあげることも大事なんです。また人間関係は影からそっと見守り、本当に必要なときだけ、手を差し伸べてあげればよいと思います。が、まずは父と娘のコミュニケーションを大切にする、これにつきますね。実は彼氏と、なんてことも…。
【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】
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【テーマ限定質問募集】
バレンタイン、ホワイトデーにちなみ恋愛に関する悩みを募集します。相談したい悩み(400字以内)、年代、性別を明記して投稿ください。2月28日まで。
【回答者】
興福寺 辻 明俊さん
金峯山寺 五條 永教さん
秋篠寺 堀内 瑞宏さん
宝山寺 東條哲圓さん
【掲載日】
毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル