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質問「来年『本厄』を迎えるのが怖くてたまりません」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2025年4月16日)

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【質問】来年「本厄」の一年になります。本来であれば自分の誕生日もうれしい気持ちでいるのですが、今年は年を取ることに少々おびえております。厄年はどのように過ごすのがベストでしょうか? 自分の守り本尊は不動明王です。お不動さんとは真逆の自分は煩悩の塊のような人間です。法に触れているわけではないのですが、欲にまみれた性格です。

 

 新年を迎えるのが怖くてたまりません。30年間の懺悔(ざんげ)、怠惰(たいだ)な性格を改める覚悟はありますのでどうか厄年を無事に終え、後厄まで無事に生きていける心得などありましたら教えてください。奈良は好きです。コロナ期間を除き自己学習を含め観光に何度も訪れております。先日は大和四寺を巡りそれぞれの本尊さまに日頃の感謝を込めて拝んでまいりました。 (30代女性)

 

【回答】辻 明俊(興福寺執事長)

 

【我知なヒント同じ一年 分け隔てなく過ごす】

 

 1月往(い)ぬる、2月逃げる、3月去る。冬を送り、春風が山を緑にする季節、いかがお過ごしですか。私も【厄年】を何回かやり過ごしています。AIの進化、加速する情報化社会にあっても、世間では厄年や仏滅を気にする人はまだまだ多いように思います。

 

 20代の頃、海外で大けがをして「衛生面も良くない、これ以上の治療はできないから帰ったほうがいい」。お医者さんからそう諭されて、やむなく帰国した苦い記憶があります。搭乗日を変更手続きする際、事情を説明すると航空会社がビジネスクラスを用意してくれました。それまではエコノミークラスにしか座ったことがなかったので、痛さをまひさせるぐらいびっくりしましたね。こういうのをけがの功名とでもいうのでしょうか。

 

 新聞に掲載される〇〇占いやテレビで流れる今日の運勢をついつい見てしまうことはありませんか。その日一日を振り返って、何か一つでも当たると、やっぱりその通りになったと思いますが、何事もなく過ぎた日のことは気にもなりません。それはともかく、生きていれば当然のように好調不調の波はあります。どちらかというと、悪いことの方が記憶に残りやすいのは人間の性質のようです。

 

 30年間の懴悔、怠情な性格を改めるのはとても素晴らしい。強い信心をもって、お不動さんと向き合えば必ず良い導きや力を頂けます。大好きな奈良に来ることで、織り込まれた不安を安心へ変えることができる。

 

 もう実践されているように感じますが、こんな例えを一つ。湯船の中でお湯を押すと、お湯は縁に当たり、自分のもとへ戻ってきます。不安や心配もこれと同じだと考えます。厄年だけを恐れても仕方ありません。同じ一年なのです。分け隔てなく過ごすことを心掛けてください。

 

 私が【大厄(本厄)】を迎えたのは2018年の興福寺中金堂落慶の年でした。それとなく気にはなっていましたけれど、大厄は【大役】である。これぞ飛躍の機会と捉え、厄払いはせず、大きな役目を果たそうと心に誓い、300年ぶりとなる落慶法要、また慶讃行事に臨みました。

 

 人生100年時代。巡ってくる節目をしっかり受け止め、自分の中で変化や気づきにするという気概があってこそ、太く濃い生き方ができるはずです。

 

 ちなみに冒頭書いた大けが。まさか…帰国して恐る恐る調べました。とっくに後厄も終わっていました。ま、そんなもんです。しかしながら、はっきりとした因果関係なんて分からないけれど、そう考えたくなるのも人の性(さが)なのかもしれません。

 

【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】

奈良の僧侶が悩み相談や質問に答えるコーナー。お坊さんに相談したい、 仕事や人間関係、恋の悩み、人生相談や信仰・仏教の教え、お寺への質問などが対象です。お坊さんへの質問を募集しています。採用は弊社と回答者で判断し、掲載の有無や掲載日についてお答えすることはできませんのでご了承ください。

 

【回答者】

興福寺 辻 明俊さん

金峯山寺 五條 永教さん

秋篠寺 堀内 瑞宏さん

宝山寺 東條哲圓さん

 

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