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質問「自分ばかり不幸に思えます。幸せになれないのでしょうか」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年9月18日)

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【質問】

 孫もいる50代の会社員です。16年前に離婚し、1人で娘や孫たちをサポートしながら、働いてきました。結婚中は相手のギャンブル、モラハラ、暴力などあり、難聴になりましたが、実家は頼れず、頑張って正社員になって離婚しました。去年、友達の紹介で彼ができ、結婚しようとなった途端、相手の子ども、うちの身内から反対されています。身体障害も4人きょうだいのうち、私だけ、いろいろ問題があるのも私だけ。どうしてでしょうか? 生まれる前に、前世で悪い事をしたのでしょうか? 頼れる人ができたのに、将来が心配で毎日泣いてばかりです。私は幸せにならないのでしょうか?(50代女性)

 

【回答】 東條 哲圓(宝山寺執事長)

 

【我知なヒント=誰もあなたを不幸にすることはできない】

 

 ご質問ありがとうございます。質問者さまのお悩みは、具体的には人それぞれだとしても、その本質は古今東西人類共通の悩みだと思われます。

 

 「私は幸せにならないのでしょうか?」とお聞きなさっているということは、今ご自身を不幸だと思っているのでしょう。とてもご苦労をされたと推察できますが、そのこと自体が不幸なことだとは思いません。お子さんが欲しくてもできなかった方から見れば、あなたはうらやましがられる人生かもしれません。

 

 また、ご家族から再婚を反対されているとのことですが、元夫とご結婚されたとき、将来離婚することを想像できたでしょうか。離婚を前提に結婚する人などおられませんが、結果的にそうなってしまった。再婚がうまくいくのかいかないのかは未知数です。ご家族が反対するのは、あなたを不幸にしたいのではなく、辛い思いをしてほしくないという思いやりかもしれません。

 

 お釈迦様は一切皆苦と仰いましたが、この「苦」とは何でしょうか。「苦」とは思い通りにならないこと、つまり人生は思い通りにならないことの連続であると仰っています。あなたがご自身を不幸であると考えるならば、思い通りにならないことを思い通りにしようとする執着がその原因でしょう。

 

 質問者さまの納得いかないお顔が目に浮かびますので、僭越(せんえつ)ながら、考え方のヒントをお伝えしましょう。人生を演劇に例えたいと思います。あなたはこの演劇の主人公です。セリフは決められていません。あなたがこの舞台でどう振る舞うかは全て自由ですので、あなたは主人公であると同時に演出家でもあります。ただし、この舞台の脚本家は表向きはあなたではありません。いえ、正確に言えばあなたが書いた脚本かもしれませんが、われわれは自分で書いた脚本をきれいさっぱり忘れて生まれてきます。

 

 あなたが今生で出会う人々、実母との別れ、身体障害という設定はあらかじめ決められたことで変更できません。しかしわれわれは、目の前で起きる現象が人生であると錯覚してしまいます。ですから、変更できない舞台装置や設定を一生懸命変えようとして疲弊してしまうのです。

 

 あなたがすべきことは、決められた設定の中でどう行動し、どう考えるかということです。ただし、ここで注意点があります。あなたと出会う人々は、あなたの脚本の登場人物であると同時に、また別の物語の主人公でもあります。ですから、他者をあなたの思い通りにすることはできません。

 

 誰もあなたを不幸にすることはできません。あなたがどう感じ、考えるかは全てあなたに委ねられているからです。脚本はあなたの理想とは違うかもしれませんが、その脚本が最終的に悲劇になるのか喜劇になるのかは、あなたの意志にかかっています。ご自身がこの物語で自由に振る舞える主人公であることを今一度思い出し、幸福な人生を演じることを自分自身に許可してあげてください。

 

【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】

奈良の僧侶が悩み相談や質問に答えるコーナー。お坊さんに相談したい、 仕事や人間関係、恋の悩み、人生相談や信仰・仏教の教え、お寺への質問などが対象です。お坊さんへの質問を募集しています。採用は弊社と回答者で判断し、掲載の有無や掲載日についてお答えすることはできませんのでご了承ください。

 

【回答者】

興福寺 辻 明俊さん

金峯山寺 五條 永教さん

秋篠寺 堀内 瑞宏さん

宝山寺 東條哲圓さん

 

【掲載日】

毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル

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