中将姫伝説を再現　奈良県葛城市　当麻寺の練供養 - 伝統行事を知ろう【ふりがな付きニュース】

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　奈良県葛城市当麻ならけんかつらぎしたいまの当麻寺たいまでらで2024年4月14日、仏教ぶっきょうを深ふかく信仰しんこうした奈良時代ならじだいの女性じょせい、中将ちゅうじょう姫ひめの命日めいにち法要ほうよう「聖衆来迎しょうじゅらいごう練供養ねりくよう会式えしき」（練供養ねりくよう）が営いとなまれました。「生いきたままで、阿弥陀あみだ如来にょらいの住すむ極楽ごくらく世界せかいを拝おがみたい」という願ねがいをかなえたと伝つたわる中将ちゅうじょう姫ひめの伝説でんせつを再現さいげんしたこの伝統行事でんとうぎょうじは、2024年に国指定くにしてい重要じゅうよう無形むけい民俗みんぞく文化財ぶんかざいに登録とうろくされました。

　当日とうじつは同寺本堂どうじほんどう（曼荼羅堂まんだらどう）から、東ひがしの方角ほうがくにある娑婆しゃば堂どうという名なのお堂どうまで、約やく100メートルにわたって「来迎らいごう橋ばし」が架かけられます。娑婆しゃば堂どうは私わたしたちが住すむ俗世界ぞくせかい、曼荼羅堂まんだらどうは俗世界ぞくせかいの西にしにあるという極楽浄土ごくらくじょうどを表あらわしています。

　午後ごご4時じを過すぎると、観音かんのん菩薩ぼさつ、勢至菩薩せいしぼさつ、地蔵じぞう菩薩ぼさつをはじめ黄金おうごんの面めんと装束しょうぞくを着つけた二十五菩薩ぼさつが来迎橋らいごうばしを練ねり歩あるいて娑婆しゃば堂どうへと中将ちゅうじょう姫ひめを迎むかえに行いきます。僧侶そうりょの読経どきょうの中なか、観音かんのん菩薩ぼさつが手てにした金きんの蓮台れんだいにうつされた中将ちゅうじょう姫ひめ像ぞうは、二十五菩薩ぼさつにまもられて来迎橋らいごうばしを渡わたります。西方さいほう極楽浄土ごくらくじょうどに見立みたてた曼荼羅堂まんだらどうに到着とうちゃくするころ、例年れいねん、夕日ゆうひが二上山にじょうさんにかかり、あたりはまるで本当ほんとうの極楽浄土ごくらくじょうどのような光ひかりに包つつまれます。この日ひも境内けいだいにつめかけた多おおくの参拝者さんぱいしゃが幻想的げんそうてきな光景こうけいに見入みいりました。

　右大臣うだいじん・藤原豊成ふじわらのとよなりの娘むすめとして生うまれた中将ちゅうじょう姫ひめは、幼おさない頃ころから毎日まいにち、読経どきょうを欠かかさない信仰心しんこうしんのあつい子こどもでした。5歳さいで実母じつぼを亡なくした中将ちゅうじょう姫ひめはとても賢かしこく、美うつくしかったことから継母けいぼにねたまれ、命いのちまで奪うばわれそうになりますが家来けらいに助たすけられ、現在げんざいの宇陀市うだし菟田野うたのにある日張山ひばりやま青蓮寺せいれんじに身みを隠かくしました。その後ご、偶然ぐうぜんに父ちちと再会さいかいした中将ちゅうじょう姫ひめは父ちちの屋敷やしきに戻もどりますが、出家しゅっけしたい、との思おもいが強つよく、当麻寺たいまでらへ入はいったと伝つたわります。

　中将姫ちゅうじょうひめは同寺どうじで、約やく4メートル四方しほうの巨大きょだいな織物おりものである綴織つづれおり當麻たいま曼荼羅まんだらを一夜いちやで織おりあげたとされ、29歳さいで生いきたまま極楽浄土ごくらくじょうどへ旅立たびだったと伝つたわっています。

　阿弥陀あみだ如来にょらいが菩薩ぼさつたちと共ともに迎むかえに来きて、極楽浄土ごくらくじょうどへと導みちびく様子ようすを演えんじる仏教ぶっきょう行事ぎょうじは1005年に恵心僧都えしんそうず源信げんしんが比叡山ひえいざんで始はじめたとされます。恵心僧都えしんそうずは現在げんざいの葛城市当麻かつらぎしたいま地域ちいきに生うまれた僧侶そうりょです。当初とうしょは「迎むかえ講こう」と呼よばれていた行事ぎょうじは、その後ご、練供養ねりくようとして各地かくちに広ひろがりました。

　当麻寺たいまでらの練供養ねりくようは現存げんそんする記録きろくから、鎌倉時代かまくらじだいにはすでに始はじまっていたことが分わかっており、江戸時代えどじだいまでは中将姫ちゅうじょうひめの命日めいにちとされる旧暦きゅうれきの3月14日に行おこなわれていました。明治めいじ以降いこうは新暦しんれきの5月14日に変更へんこうされ、2019年から4月14日になりました。

　全国ぜんこくでは現在げんざい、約やく20件けんの練供養ねりくようが続つづいていますが、奈良県文化財課ならけんぶんかざいかの森本もりもと仙介せんすけ主任しゅにん主査しゅさによると「当麻寺たいまでらの練供養ねりくようは最もっとも古ふるいものの一ひとつで、古ふるい形かたちが今日こんにちまで続つづいており、各地かくちの練供養ねりくようの中なかでも代表的だいひょうてきなものと言いえます」とのこと。

　当麻寺たいまでらの練供養ねりくようは葛城市当麻かつらぎしたいま地域ちいき、同市どうし新庄しんじょう地域ちいき、香芝市かしばし、橿原市かしはらしの人々ひとびとでつくる「当麻寺たいまでら菩薩ぼさつ講こう」が保存ほぞん・継承けいしょうしており、面めんや装束しょうぞくを着つけて二十五菩薩ぼさつに扮ふんしているのも菩薩ぼさつ講こうのメンバーです。森本もりもとさんは「古ふるくから地元じもとの人々ひとびとが支ささえている行事ぎょうじとしても、大おおきな価値かちがあります」と話はなしてくれました。