帝塚山大が絵馬と調査報告書奉納 奈良の今井堂天満神社で式年造替上棟祭

奈良市日笠町の今井堂天満神社(北森重人宮司)で9日、20年に1度の式年造替(ぞうたい)の上棟祭が営まれた。帝塚山大学(同市)が新たに制作した絵馬1点とともに、同絵馬に神社にあった古絵馬184点を加えた計185点の絵馬を収録した調査報告書100部を奉納。参列した地域住民ら約80人にお披露目された。
同神社は式年造替のたびに新作の絵馬を奉納するのが慣習となっており、今回185枚目の絵馬(縦49.5センチ、横76センチ)は疫病退散がテーマ。同神社近くの日笠フシンダ遺跡から出土した奈良時代の絵馬を参考に、東京芸術大学で日本画を専攻し、現在は同大学付属博物館学芸庶務の安藤はるかさん(41)が制作。右向きの白い芦毛(あしげ)の馬の鞍(くら)に「病が去る」にかけたサルなどを描いている。
一方、調査報告書はA4判、オールカラー40ページ。昨年10月から、同大学の清水昭博教授(考古学)のゼミ学生7人と大学院生1人が取り組んできた結果をまとめ、ほとんどの絵馬の図像や制作年、奉納者などを明らかにしている。
また、今回の調査を通じて、従来の最古、文政元(1818)年の絵馬よりも古い寛政6(1794)年銘絵馬が発見されている。
この日の上棟祭では、北森宮司が祝詞を奏上。氏子らが紅白の曳綱をひくなどの神事や、春日大社の巫女(みこ)2人による神前神楽の披露などがあった。
参列した安藤さんは「絵馬は疫病退散の祈りを込めて制作した。無事に奉納できて感無量」と感想。大学院生として絵馬の調査に携わり、現在は上牧町教育委員会事務局社会教育課技師補の奥田利伽さん(23)は「主に絵馬の配置図の下書きや、内容を調べることを担当していたが、なんとか形(報告書)になったことがうれしい」と話した。
同神社造営委員会の金山勝彦委員長は式典で、同神社の5棟ある社殿や鳥居を修理するなど式年造替の内容などを説明し、「(新作の)絵馬が出来上がってありがたい。これからは(拝殿の)センターを務めてもらう」と述べた。修理が完了した社殿に神様を戻す正遷宮(しょうせんぐう)は同日夜、営まれた。