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ハラスメント調査 働きやすい市役所に - 論説委員 増山 和樹

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 奈良市でハラスメントに関する調査結果が相次いで公表された。一つは市議会が職員と議員を対象に行ったもの、もう一つは職員を対象にした市の調査だ。いずれの結果も根深いハラスメント被害が浮き彫りとなり、対策が急がれる。

 

 市議会の調査では議員から職員(一般職)へのハラスメントが42件あった。他者の前での侮辱的な言動や長時間の叱責(しっせき)のほか、「乱暴な口調での指示で恐怖」「不当要求をのませるために質問攻め、議員室に軟禁する」と答えた職員もいた。加害者は一部の議員だろうが、職員への影響は深刻だ。議員間でも侮辱的な言動や発言制限などのハラスメントがあった。

 

 職員が議員を呼ぶ場合、呼称は「先生」が一般的に使われる。始まりは議会制民主主義が導入された明治時代にさかのぼるというが、職員に対して議員が上という観念を固定化している。地方公共団体の職員は法的には「全体の奉仕者」であって、職務専念の義務はあっても議員に侮辱されたり高圧的な態度をとられるいわれはない。市民の代表である議員と公共の利益のために働く職員が、互いに敬意を持って接するのがあるべき姿だろう。

 

 大阪府議会は2022年に「先生」の呼称を使わないと決め、職員にも通知した。議員の意識改革が目的で、先生の代わりに「議員」「さん」などを使うよう求めた。呼称の見直しは一つの例だが、職員に対するハラスメントを防ぐには、上下関係や特権意識を生まない土壌づくりも必要だ。

 

 アンケートの結果を受け、市議会は「ハラスメント対策条例」の制定案を6月の定例議会に提出すると決めた。職員が相談しやすいよう、弁護士に委託した相談窓口を外部に設けたり、複数の弁護士で構成する第三者委員会が調査を行うなどの内容が検討されているという。

 

 議会運営委員会の山本憲宥委員長は条例制定は発生抑止も目的の一つとしている。その通りだろう。そのためにはハラスメントが確認された加害議員に対する懲罰的な要素が欠かせない。厳重注意で終わるようでは十分な抑止効果は期待できない。

 

 市が行ったアンケート調査では、上司や市民などからハラスメントを受けたとした職員が回答者の約4割に上った。市長ら特別職を加害者とする回答も58件あった。より働きやすい市役所の実現に向け、市議会と歩調を合わせたハラスメント対策が求められる。

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