歴史文化

大和古寺・お参り日記【2】 - 正暦寺(番外編)

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 正暦寺は清酒発祥の地として知られる。室町時代を中心に約200年酒造りが続き、現代造られている清酒の基本的な造り方が確立、その後、奈良の酒屋が受け継いで日本全国に広まっていった。大原弘信住職によると、寺の経営の財源確保のために酒造りが始まったという。

 

境内の中にある「菩提酛」仕込みの倉

 

 お寺の規模が縮小していく中で酒造りは途絶えてしまっていたが、1999年に「菩提酛(ぼだいもと)復活プロジェクト」により復活。菩提酛とはお酒のもと、酒母のこと。酒造家たちと正暦寺、そして奈良県の研究者たちが協力して菩提山の中で乳酸菌を採取すべく、探すところから始まったという。菩提山川流域で栽培された米と、菩提山に湧き出す水、そして採取した乳酸菌を使用して「菩提酛」の再現に成功した。以降毎年1月に境内で「菩提酛」を仕込んでいる。正暦寺の「菩提酛」が使用された酒は同寺境内の福寿院内や県内各酒造で販売されている。

 

福寿院内で販売されている清酒。
左は限定品の菩提泉(こちらは完売)

 

 また、室町時代の「御酒之日記」の中に記されている、完全な「菩提泉」を再現する試みが2021年行われた。米も正暦寺境内で住職が自ら育てたものを使用し、当時のままのお酒を再現。段仕込みを採用せず、一度の仕込みだけで「純粋な菩提泉」を仕上げた。こちらは限定数量で生産され昨年は完売となった。大原住職は「シンプルで素朴な酒」と味を表現。酒造りの原点から再現した貴重な「菩提泉」も味わってみたい。

 

(文・伊藤波子 写真・藤井博信)

 

▽正暦寺

奈良市菩提山町

電話:0742(62)9569。

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