【読者プレゼントあり】芳醇な奈良の地ビールとハンバーガーの組み合わせはまさに極楽 - 大和酒蔵風物誌・第7回クラフトビール(奈良醸造)by侘助(その3)
手作りハンバーガーとビールで乾杯
パテは大和牛100パーセント
今回取材対象をビールと決めてから、家呑み用のアテはどうしようか考えたが、先にも述べたように、ビールには何でも合うから、あれにしようかこれにしようか候補が次々と浮かんで正直困った。迷っているうちに、去年の夏初めて沖縄を訪れた際、オリオンビールとハンバーガーの組み合わせがすこぶる美味しかったことを想い出した。現地ではチャンプルや海ぶどうや沖縄そば、珍しいところではヤギも食べたが、正直、おいしいにはちがいないが感動的にうまいかというとそこまでではなかった。
そんな中、昼ごはん用に入ったアメリカンタイプの海辺のレストランで食べたハンバーガーは飛び抜けていた。本格ハンバークの上で橙色のチェダーチーズがおいしそうに溶けて、新鮮なトマトやレタスとともに大口を開けて食べたそれは、沖縄料理に飽きていた味覚を強く刺激した。それがまたオリオンビールのあっさりさわやかなあの味にぴったりで。純粋に沖縄を楽しもうとする方々からすれば邪道以外の何ものでもないが、こればかりはどうしようもない。美味しいものはやはり美味しいのだ。あまりの衝撃に、帰る日に再びそのレストランに行き、また同じものを食べた。
そんな体験を想い出したものだから、そうだ、ではあれを自分で再現してみようと思い立った。ハンバーガーなんて作ったことないが、奈良にはハンバーグの素材として幸いにも大和牛があるし、ハンバーグさえうまく焼ければあとは何とかなるだろう。
浪岡さんに家呑みの記事ではビールとハンバーガーで行こうと思っていると相談すると、本文でも紹介した「Function」を薦めて下さった。これならどんなシチュエーションでもビールの味を楽しむことができるので、ハンバーガーのような食べ物にも合うだろう、と。奈良醸造にはブランドロゴがあしらわれた専用のグラスが販売されていて、せっかくならそれで呑むのがよいだろうとひとつ所望する。大きいのと小さいのがあったが、当然ビールはグイっと派の我が身としては大きなほうを選んだ。これで呑み物はOK。
ハンバーガーの主役となるハンバーグ用の肉は、奈良市内の高畑の奈良教育大学の前に「一(はじめ)」という大和牛の専門店で調達。筆者は初めて訪ねたが、専門店と謳うだけあって、ステーキ肉をはじめとした店内すべての牛肉は大和牛だった。ハンバーグ用にひき肉を探したが、一パックしか残っていなかったので量的に少し足りないと思って、どうせなら自分で包丁で刻んだ粗びきの肉で本格ハンバーグを作ってみようと思い直した。沖縄のあの店のハンバーグもそんな感じだったし、しかもビーフ100パーセントだった。ハンバーグといえば、いつもひき肉に玉ねぎやパン粉を混ぜて作っているので、これまでと違う初めての試みにワクワクしながら、切り落としを全部で500グラム購入した。
その他の食材は、今回は最寄りのスーパーですべて買いそろえた。チェダーチーズ、ピクルス、レタス、トマト、マスタード、バンズと、とくに珍しい素材はない。
材料の準備完了!
調理スタート
帰って早速調理開始。まずは買ってきた大和牛の切り落としを包丁で粗くひく。そこに塩、胡椒を加えて馴染むまで練る。そしてある程度まとまってきたところで成形する。以外と簡単。他に何も混ぜないので、いつものハンバーグよりよほど手間がかからない。唯一厄介だったのはチェダーチーズ。スライスしたものは値段が倍ほどしたので、ブロック状のものを選んだが、これをスライスするのに手こずった。薄く切ろうとすると途中で切れてなかなかうまく正方形にならない。かなり時間をかけて慎重を期したが、一部分厚いところが残ってしまった。これはこれでまた一興と気を取り直して、バンズや野菜を切って準備完了。
大和牛の切り落としを
包丁で粗びきして
パテをこしらえる
一連の行程の中で唯一調理と呼べるのがハンバーグを焼くことだが、これも特段難しい作業ではない。両面を強火で焼いてうま味を閉じ込めたら、その後弱火で中まで火を通す。焼きあがる直前にハンバーグの上にチェダーチーズを乗せて余熱で溶かす。火を止めてチーズがいい具合に溶けてきたら、いよいよバンズにはさむ。バンズの下部にはあらかじめマスタードを塗っておいて、そのうえにレタス、チーズを乗せたハンバーグ、スライスしたトマト、ケチャップの順に重ね、最後にバンズの上の部分をそこにそえて完成。いたって簡単である。
バンズにマースタードをたっぷり塗って
レタスを敷いて
チェダーチーズとパテを乗せて
トマトを重ねて
ケチャップをかけ、バンズを添えたら出来上がり!
ハンバーガーには定番といえるポテトは、冷凍食品を使った。これまで生のじゃがいもを茹でたり揚げたりしてフライドポテトに挑戦したが、一度も成功したことがない。お店で出てくるようなあんな感じにするのは実に難しい。それがわかっているので、今回日頃から愛してやまないマクドナルドのポテトを買ってきてそれを添えようかとも思ったが、何か反則っぽい気がしたし、あれも冷めてしまったら美味しさが半減してしまうのでやめた。あれを熱々のままでビール呑めたら最高なのになあ。せめて店に缶ビールでも置いてくれないかなあ。とは、およそかなわぬ願いである。いずれにしても、自分でつくるよりも市販のもののほうが確実に美味しいので、冷凍のポテトの揚げ立てを添えた。
金色に輝くビールに至福の時間
味は写真にある見た目通りの美味しさだった。マスタードとケチャップだけのシンプルな味つけだったが、チェダーチーズの濃厚な味わいと牛肉の風味がそこに加わってまさに本格ハンバーガーと呼べる出来で、家族にも大好評だった。ポテトもさすが市販の研究し尽くされた商品だけあって安定したうまさで、ハンバーガーとの取り合わせは最高。
そして「Function」である。専用のグラスにキラキラと金色に輝くビールを注ぐ。多くのビール愛好家はビールと泡のバランスにこだわるが、筆者は泡を好まない。あくまでバブルより実体だ。ビール本体優先なので、ふだんはできるだけ泡を立てないようにグラスを斜めにして注ぐが、今回は最初の1杯だけはビジュアルを意識して少しだけ泡を立てた。浪岡さんがおっしゃっていたように、呑んだ瞬間にホップの爽やかな香りがすうーっと鼻を通って、その後喉を通過するときにグッと苦味が感じられて、上品で優雅な味わいを体験できた。もちろん、アテとの相性も抜群である。
「Function」を二本開け、さらに一緒に買ってきた「Fifur」も開けた頃には、ハンバーガーも完食。いつも夜はお酒中心でアテは少量にとどめるようにしているが、この日だけは別。かなりボリューミーだったハンバーガーとポテト、それからビール三本で、久々にお腹がはちきれそうなほど満腹になった。ダイエットを初めて以降忘れていた満足感だ。あゝ、極楽、極楽。やっぱり食べ過ぎのしあわせは捨てがたい。
おまけの話
この話にはちょっとした落ちがある。注意深く読んで下さった読者はお気づきかもしれないが、実は、ハンバーガー用に買ってきたピクルスを食材として使っていない。いや、使っていないのではなく、使えなかったというほうが正しい。
というのも、ピクルスを入れた瓶のふたが頑なに開かなかった。そんなときは火に当てたり、お湯で温めたりすればたいてい開くものだが、何度試しても頑として開こうとしない。せっかくこれように買ってきたのだから、いらいらして瓶ごと割ってやろうかとも考えたが、そんなことをしたら破片が混じって食べられなくことに気づいてやめた。悪戦苦闘の末にも駄目だったのでとうとう諦めて、ピクルス抜きでつくることにしたというのが裏事情である。
ところが、この日一人だけ帰りの遅かった高二の娘が握力には少し自信があるというので、ふたを回してみたら、これがびっくり、スッと開いた。父親が、自分が試行錯誤したおかげでふたがゆるくなっていたとか、部屋の温度で全体が温まっていたとか、負け惜しみをいう傍で、どこか自慢げな娘。くやしいが、握力が劣るはずないのに、開けられなかったのは事実なので負けを認めるしかない。
その日は外で夕食をすませてきたというこの娘用に次の日の朝、改めてマスタードの上にピクルスを敷いて、本来思い描いていたハンバーガーを作ってあげた。もちろん彼女は美味しいという。そりゃそうだろう、美味しいのは当たり前だ。くやしさと情けなさを噛みしめながら、父親は、次回こそふたの開くピクルスを買ってきて、必ずピクルス入りのハンバーガーを食べるぞと秘めた決意を固めるのだった。(第7回了)
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