古代建築研究の第一人者で元奈良国立文化…
古代建築研究の第一人者で元奈良国立文化財研究所長の鈴木嘉吉さんが亡くなった。南都の寺院建築の研究や修理に多大な功績を残したほか、平城宮跡朱雀門などの復元にも携った。
失われた古代建築物の復元は、たやすいことではない。遺跡の発掘調査で建物の位置や規模は分かるが、そこに建っていた物の形状や材質までは分からない。
鈴木さんは専門の建築史学だけなく、考古学や文献史学などの研究成果も駆使。歴史の中に埋もれた建物の姿を追い求めた。
その鈴木さんが「古代の復元建築として空前絶後」と称賛した建物がある。2018年に約800年ぶりに復元された興福寺中金堂だ。
奈良時代に創建された興福寺には豊富な史料が残り、奈文研などの手により長年の丹念な発掘調査が行われてきたからだ。自らの研究の集大成というべき建物の落慶法要で、「まさに天平の姿がよみがえった」と晴れやかな笑顔を見せた。
奈文研では「鬼所長」と恐れられたそうだが、記者の取材にはいつも丁寧に答えてくれた。中金堂の前に立つたびに、優しい笑顔を思い出すだろう。 (法)