「奈良の大仏さま」が御座(おわ)す東大…
「奈良の大仏さま」が御座(おわ)す東大寺大仏殿。奈良時代の創建以来、2度の兵火により焼失し、その度に人々の努力によって再建された。
創建時の建物は治承4(1180)年の平家による南都焼き討ちで焼失。鎌倉期に再建された建物も永禄10(1567)年に戦国武将の争いで再び焼け落ちた。
このときは再建まで時を要し、大仏は100年以上も露仏のままだった。宝永6(1709)年にようやく再建された現在の大仏殿は創建時より小ぶりだが、木造建築物として世界最大級の規模を誇る。
しかし、巨大さゆえに建物の維持は難しかった。明治時代の写真では軒を支えるため四隅につっかえ棒が立ち、大切な文化財を守ろうとする人々の意思を感じる。
14日、その大仏殿に液体のようなものがまかれる事件があった。立ち入り禁止の場所であり、偶然ではなく悪意があったとしか考えられない。
古来から人々が大切に守ってきた文化財も些細なことから一瞬のうちに失われてしまうことは、歴史が証明している。今回の事件でそのことを改めて痛感した。(法)