【インタビュー】奈良県考古学の最前線 奈良県立橿原考古学研究所の青柳所長と奈良文化財研究所の本中所長に聞く
発掘調査・研究の成果がニュースを彩り、世界遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都」が国内推薦候補に選定されるなど、考古学や文化財の話題が尽きない奈良。近年の調査研究と今後の考古学をどう見るか。最前線を走り続ける県立橿原考古学研究所の青柳正規所長と奈良文化財研究所の本中真所長に話を聞いた。(聞き手・竹内稔人)
青柳 正規・奈良県立橿原考古学研究所長
あおやぎ・まさのり
1944(昭和19)年11月生まれ。69(同44)年に東京大学大学院博士課程退学。同大教授や同大副学長、国立西洋美術館長、独立行政法人国立美術館理事長などを歴任し、2013~15年、文化庁長官。19年8月から現職。専門はギリシャ・ローマ考古学。
進化する「保存科学」に力
改めて認識された保存科学の重要性
近年で印象に残っているのは、2022年11月に奈良市の富雄丸山古墳(4世紀後半)で発見された、古代東アジア最長の鉄剣となった「蛇行(だこう)剣」です。23年1月に県立橿原考古学研究所に運ばれ、保存科学で保存処理をしましたが、奈良というのはとんでもないものが出るんだと感じました。ああいったものがまだまだ奈良の地下には眠っているのでしょう。
蛇行剣の保存処理を見ても分かるように、保存科学の力はとても大きいものがあります。遺物が土の中にある時は一定の安定した状態にありますが、その遺物が発掘調査で出土した際には、がらっと変わる新しい環境に慣れさせなければいけません。それが保存科学の一番重要な役割になります。
保存科学はこれからもどんどん技術が発達する一方、人手のかかる分野です。そのため、将来的には橿考研の保存科学部門を「保存科学センター」にしたいと考えています。
日本全体で発掘もする、保存科学の手当てもする、博物館で展示もするということを一貫してできるのは橿考研だけです。社会が成熟していく中で文化財は増えていきます。保存科学センターをつくることは、現代社会の要請でもあると思っています。
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