奈良の尼寺は虫たちの楽園 「扶養家族が多くて大変よ」 - 音羽山観音寺後藤住職の花だより
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奈良県桜井市にある尼寺「音羽山観音寺」を記者が訪ね、後藤密榮住職の日々の暮らしぶりを紹介します。後藤住職には犬のオサムやサクラ、室内で暮らすネコのほかにも世話をしている家族がたくさんいます。スズムシもその家族の一員です。本来6月ごろには目を覚まし、そろそろ鳴き声を聞かせる子たちが今年は少し様子が違うようです。
「スズムシバナが一昨日から咲き始めたの」
名前の通り、スズムシが鳴くころに咲く一日花とのことですが、9月に入った今も、今年はスズムシがまだ鳴かないそうです。
「毎年6月20日ごろには出てくるんだけど、7月10日になっても出てこないからあきらめかけていたら、白い小さい子たちがようやく出てきたの」
住職は6~7年前からスズムシを飼っています。そのスズムシが孵化する時期が昨年までとは違うとのこと。スズムシバナの方が先に咲いたようです。
スズムシの家を見せてもらいました。たくさんのスズムシの幼虫が元気に動き回っていました。何度か脱皮を繰り返して成虫になり、鳴くそうです。
「正しくは羽をすり合わせるんだけど、『鳴く』って言うわね」
確かに、「鳴く」が一番合う言葉です。
「元気すぎて、出て行っちゃうのよ。外の世界は厳しいよ、自由は自由だけど」
外にはクモなどスズムシの敵がいっぱいいます。覆っている網の隙間をぬって脱出し、外を歩いているスズムシもいました。
住職は、そんなスズムシのためにも、エサであるナスを家の外側にも置いていました。
「外の子の方がたくましくなって大きいかもね」
危険な世界に出て強くなっているのかもしれません。
住職は庭にも世話をする家族がいます。前回の取材の時、ミツバチが逃げて行った話を聞きました。もう一つ、庭に養蜂箱が置かれ、ミツバチが住んでいます。
「今日はこんなにたくさんいるわ」
一つ残る養蜂箱には、この日はたくさんのミツバチが出入りしていました。
「花のない季節には、砂糖水を置いているのよ」と住職。
住職は庭に飛ぶハチのためにも食料を用意しているとのことです。
「扶養家族が多くて大変よ」
そう言う住職は、スズムシやミツバチを温かい目で見つめていました。
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。桜井市南音羽。
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。
火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門