質問「10代の男性です。数珠(じゅず)の正しい選び方を教えてください」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年8月7日)
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【質問】
今の時代、AIに聞けば答えが出てくるかもしれませんが、AIによる結果ではなく、心打たれる教えを説いているお坊さんならどんな答えを出してくれるのかと思い質問します。数珠の正しい選び方についてです。こんなことを考え出したきっかけは、友達にプレゼントを渡したら、返礼義務を感じたのか、その場で持っていた数珠を私にくれたことです。辞書には、数珠は「煩悩を消して身心を清浄にし、仏さまへの帰依をあらわす法具」とありますが、最近ではお坊さんだけでなく、たくさんの人が数珠を持っています。
玉の大きいものや小さいもの、玉の数が多いもの少ないものと形はさまざまです。私も流行りとして、ファッションに取り入れようと、もらった数珠を手に取るのですが、「数珠だしな」とわれに返り、身に着けたことはありません。本来の意味と数珠自体の在り方が変わってきているように私は感じます。そこでどの数珠がお坊さんからして一番いいのか、また現在の数珠の在り方についてお坊さん自身どう思っているのかを質問させてください。
(10代男性)
【回答】
東條 哲圓(宝山寺執事長)
【我知なヒント=正しさを考えるよりも意図を酌(く)むこと】
ご質問ありがとうございます。正しい数珠の選び方を知りたいとのことで、そのきっかけがプレゼントの返礼品として、10代のお友達からその場でお持ちだったものを頂いたということですから、その「数珠」とは、察するに中糸がゴムになっていてブレスレッド型の「腕輪念珠」のことだと思われます。
正しい数珠の選び方としましては結論は簡単で、「仏教の宗派によってそれぞれ数珠の形状が異なるため、あなたの所属している宗派の本式(本式の数珠は大抵108個の珠があります。108は煩悩の種類の数です)の数珠をお好きな材質でお選びください」となりますが、質問者さまはそのような回答を得たいわけではないでしょう。
数珠とは本来何かということから考えてみます。数珠とは仏教徒が用いる法具の一つですが、その名から推測できますように、数を数える道具です。密教においては真言を1回お唱えするごとに、「南無阿弥陀仏」とお唱えする宗派でも一度お唱えするごとに一つ珠を繰ります。
キリスト教徒が用いるロザリオも十字架のペンダントのように見えますが、実際は祈りの際に手に持って珠を繰り、祈りの回数を数える道具です。交通量調査の際に、カウンターを用いて人や車の数を数えるように、仏を念じる回数を計るのが本来の数珠の役割です。仏を念じる際に用いるため「念珠」ともいいます。
数珠の現在の在り方についてですが、信仰を伴わないファッションで身に着ける数珠が法具としての意味をなさないことは明白でしょう。腕輪念珠に代表されるような略式の念珠は、本来の意味としての念珠というよりも、サッカー選手が身に着けて日本でも広く知られるようになったミサンガに近いのかもしれません。つまりは願いを込めたお守りのように、肌身離さず身に着けておく象徴のようなものです。
お友達から頂いた数珠をファッションとして身に着けるのならば、それはアクセサリーに過ぎないのかもしれません。アクセサリーに「正しさ」を求めても意味がないでしょう。気分が良くなるお好きなものを身に着けてください。ただし、数珠をくださったお友達の意図を酌み、願いを込めて身に着けるものには「念」がこもるかもしれませんよ。
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【掲載日】
毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル