歴史文化

【インタビュー】奈良大教授・外岡慎一郎さん(2) - 「鎌倉殿の13人」前半の注目点と後半の見どころ

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 鎌倉幕府の成立と源頼朝亡きあと北条義時を中心に合議制を敷いた13人の御家人を描いた、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も後半に突入。序盤にもインタビューをした外岡慎一郎・奈良大学教授(日本中世史)に、ドラマの前半で注目した点と後半の見どころを聞いた。

 

 

源頼朝亡きあとの権力争い

 ――「鎌倉殿の13人」も後半に入ります

 

 源頼朝(1147~99年)が死去し、いよいよその後の話となります。西暦でいうと1200年代に入っていく。頼朝亡き後、北条義時(1163~1224年)や父時政(1138~1215年)、姉で頼朝の妻政子(1157~1225年)がどう幕府を支えていくか。そこには将軍2人の悲劇もあります。

 

 ドラマの前半で出てきた曽我兄弟のあだ討ちの話は、背景に頼朝暗殺計画が隠されているという、近年言われ始めたストーリーで描かれていました。私が学生の時にもその議論はあり、決して新しい話ではありませんが、ドラマとして描かれるのは初めてではないでしょうか。

 

 一般的には、親を不当に殺された兄弟が成長して敵を討つ、という偉人伝のような描かれ方がされます。ところが「鎌倉殿の13人」では、そこに兄弟の思惑を超えて事が運んだという話になりました。さまざまな思惑が絡み合い、北条氏と比企氏の対立のような姿も見せていました。

 

 その話の流れで言えば、比企能員(?~1203年)の娘が2代将軍となる源頼家(1182~1204年)の側室となり、一幡(1198~1203年)が生まれていました。

 

 北条氏が表舞台にいられたのは、頼朝の妻となった政子の存在があったからです。妻の一族が権力を握るという状況を、今度は比企氏に奪われかねない。北条氏には比企氏に立場を乗っ取られる警戒感がありました。そこに生じた両氏の対立はドラマ後半でも見どころです。

 

研究成果を反映したストーリー

 ――ドラマ前半で注目した点は

 

 大河ドラマは娯楽ものですが、時代考証の専門家も付いて、重要なポイントでは新しい研究の成果が反映されています。

 

 例えば、1185(文治元)年に時政と義時が上洛し、後白河法皇に守護・地頭の設置を認めさせる場面。源義経(1159~89年)と源行家(?~86年)の追討を目的に、国々に地頭を置いて兵糧米を調達できるようにしたいと受け入れさせたわけです。

 

 地頭はのちのち荘園ごとに置かれたイメージがあると思いますが、時政上洛の際に後白河法皇の了解を得たという解釈と、時政が認めさせたのはのちの地頭とは異なるものという解釈があり、長く論争になりました。今のところ、(後者の)「国地頭」と呼ぶべきものであった、との見解で決着しています。

 

 後白河法皇に守護・地頭設置を認めさせたのは本来、義経と行家討伐が目的です。討伐されれば終了する時限措置のような制度だったはずですが、鎌倉の幕府としては存立基盤をしっかりしておきたいのでそれでは困る。

 

 そこで90(建久元)年、頼朝が初めて上洛して、後白河法皇に諸国守護権を認めさせます。後白河から頼朝に軍事権を移譲させ、武家の棟梁は一人しかいない、と認めさせたのです。

 

 こうした流れで守護・地頭の設置を、時限措置で終わった国地頭という形で描いた大河ドラマは初めてではないでしょうか。

 

 

描かれ方が印象的だった源義経と梶原景時

 ――興味をひいたところは

 

 やはり話題にもなった源義経の描き方です。これまでのような悲劇のヒーローとしてではなく、悲劇性はあるものの明るくて素直な姿で描かれていました。

 

 登場シーンでは、矢で射止めたウサギの争奪戦となった猟師を、だまし討ちにして殺してしまいました。ドラマを見ている人は、義経のその後の描かれ方を心配したのではないでしょうか。

 

 壇ノ浦の戦い(1185年)では船の漕ぎ手まで殺す、本来あってはならないルール違反を犯しましたが、それで戦を勝ちました。義経の登場シーンは、そんな反則勝ちの姿につながるのだと思います。

 

 義経は、旧来の武士のほまれを最低限維持するというルールを無視して戦った。そして一瞬にして平家を倒し、一瞬にして自らも滅び、歴史上の役割を終えていきました。

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