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偶発的な情報との出合い「ノイズ」あってこそ 文芸評論家の三宅香帆さん - 春の新聞週間インタビュー

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 日本新聞協会と全国の会員新聞・通信・放送社は、4月6日に始まる「春の新聞週間」に合わせ、三宅香帆さん(文芸評論家)にインタビューした。情報があふれる中での新聞の価値や、日頃の新聞の読み方について聞いた。

 

 

 新聞はデジタル版で読むが、気になるニュースを読んだ後は、見方が偏らないように複数の新聞社が配信する同様の記事にも目を通すようにしている。報道のスタイルが各社それぞれ違うし、一つのメディアを信じ過ぎないことが大事だ。


 また、新聞記者が実名で公開するSNS(交流サイト)も積極的にフォローしている。「この記者の発言なら信頼できる」と、読む記事を決めることも多い。売り上げや採算にとらわれず記事を書けるのが組織に身を置く新聞記者の強み。記者は会社の主張に沿って記事を書く印象があるが、記者一人一人がもっと前に出て、個人の名前で責任を持って発信した方が伝わりやすいと思う。


 インターネット社会は、SNSで一個人がそれぞれの思いを発信することができる。特に若者は、個人が届ける情報を信頼する傾向が強い。そんな若年層を中心に、新聞離れが顕著だとされている。


 自分の欲しい情報をインターネットで手軽に得ることができる現代は、その背景にある知識や周辺にある文脈が「ノイズ」として除去される傾向にある。そんな現状を、2024年に刊行した「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社)で、指摘した。


 事件、事故、政治、経済、暮らし、文化などあらゆる分野を網羅した新聞も、「ノイズ」を含むコンテンツだと思う。「ノイズ」を排除し、自分が欲しい情報のみを取り入れていては、偶発的な情報との出合いが生まれず、予期せぬ分野への関心が広がらない。


 取材網が全国に張り巡らされ、記者が地道に取材するメディアは新聞をおいてほかにない。高知で育ち、就職で東京暮らしを経験したが、現在は大学時代を過ごした京都での生活を満喫している。京都は、書店や喫茶店が近くにあって利用しやすい。そんなコンパクトな街のサイズが気に入っている。地方に住んでいると、「東京が日本のスタンダード」という考えに違和感を覚えることがある。各地にネットワークを持つ新聞には、地方の声をどんどん届けてほしい。

 

 

 

<みやけ・かほ>

 1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院在学中の2017年に「人生を狂わす名著50」(ライツ社)でデビュー。会社員生活の傍ら執筆活動を続け、22年に独立。24年刊行の「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社)で「書店員が選ぶノンフィクション大賞」受賞。京都市立芸術大学非常勤講師も務める。

 

 

※この記事は春の新聞週間に合わせて、日本新聞協会の会員新聞・通信・放送社が共同制作したものです。

 

 

春の新聞週間とは
 日本新聞協会は4月6日から1週間を「春の新聞週間」と定めている。進級・進学、就職など新生活が始まる時期に合わせて新聞の魅力を伝えるキャンペーンを実施している。

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