今年は東大寺の初代別当・良弁僧正の没後…
今年は東大寺の初代別当・良弁僧正の没後1250年にあたる。同寺では奈良時代に寺創建や大仏造立に尽力した高僧の遺徳をしのぶ法要がきょう16日まで営まれる。
良弁で思う浮かぶのは二月堂前の「良弁杉」に関する伝説だ。幼児のころ大ワシにさらわれた良弁が、この杉に引っかかっているところを保護されたという。
僧となった良弁は毎日、杉の前で願掛けを行い、わが子を探し求めて寺にたどり着いた母と再会する。「良弁杉由来」として、文楽や歌舞伎などの題材にもなった。
有名な良弁だが、意外にも正史「続日本紀」での登場はわずか4カ所のみ。亡くなったときにも、他の著名人のように生涯を振り返ることもなく記事もわずかだ。
良弁の生きたのは九州で藤原広嗣の乱が起こり、全国で天然痘が流行するなど激動の時代。ウクライナやイスラエル・ガザ地区で戦争が起こり、新型コロナウイルスの完全終息が見えない現代にも通じる。
良弁の生涯はよくわからない。しかし、伝説として残ることは、多くの人々に慕われた証といえるのではないか。(法)