13日の本紙に帰還兵を迎える「のぼり旗…
13日の本紙に帰還兵を迎える「のぼり旗」の記事が掲載された。「耳成村 迎軍人大字十市」と大書され、橿原市十市町の神社で今年3月に見つかった。
自治会長の辰巳誠治さんにはこの旗にまつわる悲しい思い出がある。帰還兵を乗せた船が舞鶴港に入ると、翌日、村の人たちはのぼり旗を手に畝傍駅へ。辰巳さんは出征した長兄を探して何度も駅に出向いたが、ついに姿を見ることはなかった。
母とむなしく帰った記憶が今も辰巳さんの胸に刻まれている。母が長兄の死を受け入れたのは終戦から18年後だった。
JR西日本の所管となった畝傍駅は今も変わらず人々に利用されている。神武天皇陵や橿原神宮を参拝する皇族のために設けられた貴賓室も残る。
駅舎はJR西日本から無償譲渡を提案された市が民間活用を検討していたが断念、建て替えが検討されている。保全を求める住民有志は9月4日にも市内で会合を開く。
現駅舎の完成は昭和15年。紀元2600年式典に合わせて建てられ、戦中、戦後の世情を色濃く映す。歴史の語り部として後世に伝えるべき遺産だろう。(増)