春過ぎて夏きたるらし白妙の衣ほしたり天…
春過ぎて夏きたるらし白妙の衣ほしたり天の香具山。この季節になると決まって思い出すのが、美しい緑と心地よい風を感じさせる万葉の秀歌。
1300年以上も昔の歌なのに古さはない。夫の天武天皇の遺志を継ぎ、日本という国づくりを推し進めた持統天皇の感性の豊かさに驚く。
そして、日本の黎明(れいめい)期をけん引したのは女性だった―そんな言葉にも思いが至る。日本遺産「日本国創成のとき~飛鳥を翔(かけ)た女性たち~」が掲げるテーマだ。
同遺産は地域の歴史魅力や特色を語るストーリーを文化庁が認定する制度で、文化財の保全よりも地域の活性化に主眼を置いた取り組みだ。
橿原市と高取町、明日香村が申請した「日本国創成のとき」は15年に県内初の遺産として認定。前出の持統天皇や額田王ら幅広い分野で活躍した女性たちを主役として歴史を語る。
認定状況を見直す審査でも重点支援4地域の一つに選ばれた同日本遺産。初夏の季節感にも通じる躍動的なテーマを生かし取り組みを進めれば、同地域が目指す世界遺産登録の弾みにもなると期待する。(松)