【写スポーツ】攻撃は最大の防御 - 王寺工業高校ボクシング部
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今月4日にあった国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級タイトルマッチで王座を獲得した西田凌佑(27)=奈良県香芝市出身=を輩出した王寺工業高校ボクシング部。プロ、アマチュアを問わず活躍する選手を数多く育てる高見公明監督(63)=同校教諭=らの指導の下、日々練習に励んでいる。3年の堀江耀斗(ライト級)は昨年北海道で開かれたインターハイ(高校総合体育大会)で優勝し、連覇を狙う。
プロとアマでルールは若干異なるが、リング上で2人の選手が向かい合い、グローブをはめた左右の拳で相手と打ち合い勝負を決める格闘技。その歴史は古く、古代ギリシアのオリンピックでも、紀元前688年の第23回大会から行われた記録がある。8月に開催されるパリ五輪も日本から男女各1階級で選手の出場が内定、6月にタイの首都バンコクで行われる世界最終予選(第2次予選)に男女合わせて8階級に選手が出場。高見監督も帯同する。
全国の高校生が自らの高校生活を懸けて臨むスポーツの祭典「インターハイ」。憧れの舞台であり、目標の大会。毎年も堀江はじめ5選手の出場が確実視されている。堀江は昨年のインターハイで圧倒的な強さを発揮。ダメージにつながるパンチをほとんど受けず、好機を逃さず畳みかけ、頂点に立った。インターハイのボクシング競技は長らく男子のみ体重別8階級で行われてきた。ことしの北海道大会では女子もエキシビジョンとして実施されるなど裾野を広げている。
現在、王寺工ボクシング部は3年4人、2年2人1年11人。走り込みを中心にした授業前の朝と、シャドーやミット打ちなどのほか、寸止めのパンチで行うマスボクシングやスパーリングなど、試合を想定した練習を放課後に行う。指導法はいたってシンプル。高見監督は「相手に打たせないことが基本。攻撃は最大の防御で瞬発力を付けることが大切」と話す。補佐する米澤諒治コーチ(38)は監督の教え子。東京農業大学を卒業後、食品会社で勤務する傍らボクシングを続け全日本大会3連覇など輝かしい実績を残した。現役を退いた後、奈良に戻り昨年4月から王寺工で実習助手を務める。米澤コーチは高見監督について「個々の選手の強みを見い出し、伸ばす力が秀でている」と慕う。
高見監督は県ボクシング界の黎明(れいめい)期から選手、指導者として尽力。1983年、王寺工業高校の教員となり、翌年秋に奈良で開催された「わかくさ国体」で県代表選手の一員としてチームをけん引。自らが出場した成年団体で準優勝し、少年団体も3位に入り総合優勝に導いた。その年の夏、ロサンゼルス五輪代表にも選出された。選手を退いた後、指導者としての活躍も目を引く。今も動きは軽やかで、選手のミット打ちの相手になることもしばしば。先頭に立ち走る姿は力強い。将来を担う小、中学生を対象にした「ボクシング教室」も土、日、祝日などを中心に同校で開催している。詳しくは高見監督、電話090(3288)5460。
(西田のタイトルマッチを除く写真と文 牡丹賢治)
【インターハイ出場が確実視されている選手】
・ライトフライ級(46キロ級) 上窪星(3年)
・フライ級(49キロ級) 余部颯大(3年)
・バンタム級(52キロ級) 西村弘應(3年)
・ライト級(56キロ級) 堀江耀斗(3年)
・ライトウェルター級(60キロ級) 佐々木蒼空(2年)
※6月14日から大阪で開催される近畿大会終了後、正式に決まる。
鏡の前で行うシャドーボクシング
グローブをはめる前、手を傷めないよう慎重にバンテージを巻く
腹筋を鍛える選手
王寺工から初の世界王者・西田凌佑
守り磨き頂点 原点は高校時代
プロボクシングIBM世界バンタム級王者に就いた西田凌佑。王寺工から初のチャンピオンとなった。派手に倒すパンチに頼らず、守りを磨き頂点に。その原点は高校時代にあると見る。日々の練習でパンチをかわし、相手との最適な距離感を習得し、磨きをかけた。ボクサーにとっては減量との戦いも。「試合前の計量後、高見監督に振る舞われたおじやの味は今も忘れられない」と明かす。同監督の帰国に合わせ、6月に凱旋する。
4日に開催されたタイトルマッチ。相手のボディを攻める西田(右)=エディオンアリーナ大阪
2024年5月22日付・奈良新聞に掲載