アマチュア野球を応援する MRバット - 奈良の自慢企業(12)

プロ野球選手も使用
奈良県橿原市の緑豊かな里に、野球の木製バットを自社製造しているMRバットがある。
代表の森崎寛樹氏は、地元の小学校に野球チームがなかったため、仕方なく中学でクラブに入り野球を始めた。高校は、1学年に生徒が約800人もいる超マンモス校に入り、360人が在籍していた野球部で1年生からピッチャーだったが、無理がたたって2年生で肩を壊してしまう。その後、1年半のリハビリ生活を送り、龍谷大学に進学、野球部に入部したものの、肩が万全ではなかったため、俊足を生かして外野手へコンバートを果たした。
大学卒業後は家業だった森崎林業を継いで法人化、集成材や住宅用部材を製造していたが、住宅着工戸数が減少していく中、野球バットを製造するMRバットを個人創業した。
森崎林業が法人としての役目を終えた後はバットの製造に絞り、2020年11月に法人としてのMRバットを設立した。同社で作るバットはメイプル材(カエデ科)を主な材料としている。木製バットの材料として有名なアオダモと比べると木の密度が高く堅いため、折れにくく打球面の凹みも少ない。耐久性にも優れているとされる。
メイプル材を使って作る同社のバットはどれも細身で、シャープな印象を受けるものばかりだ。筆者が少年野球をしていた頃に見ていた軟式野球用のバットとも見た目がだいぶ違う。森崎社長に伺うと、「私が細い方が好きなんですわ」と野球少年のような屈託のない笑顔が返ってきた。
そんな同社のバットを使用しているのが、ワールド・ベース・ボール・クラシックにも出場し、横浜DeNAベイスターズに所属する牧秀悟選手だ。重心位置や重さ、長さなど、設計の打ち合わせに牧選手が当地を訪れることもあるそう。同じベイスターズで捕手の伊藤光選手も同社のバットを使用している。そのほか、同じくWBCに出場し、五條市出身、読売ジャイアンツに所属する岡本和真選手のバットも森崎社長がデザインしたものだ。
使用するプロ野球選手が多数いる一方で、同社が市販するバットにはNPB(日本プロ野球機構)のマークは付けていない。代わって大学、社会人野球で公式戦使用が認められるBFJマークが入っている。アマチュア野球を応援したいという森崎社長の強い思いを反映したものだ。地域に根ざした、知る人が好んで使う「地バット」、とてもかっこいいと思う。
(帝国データバンク奈良支店長・近藤穣治)
【MRバット】
奈良県橿原市南山町502