コロナでも学んだ トランプ関税への対応 - 編集委員 松岡 智
米トランプ政権の各国に対する相互関税の導入は、一部を除き4月中旬から一時停止の状況が続く。自動車関連などを中心に追加関税への懸念は収束しないが、公的機関や経済団体、金融機関が設ける関連の相談窓口にアクセスする県内企業はさほど多くないようだ。関係者は、県内には直接輸出を行っている中小、小規模事業者は少なく、影響も2次、3次になるとみられ、模様眺めの様相だと指摘する。民間信用調査会社が行ったアンケートでの県内企業の具体的対応策への回答数、内容からも同様の反応がうかがえる。
先行きは不透明ながら、このままでいいのだろうか。いたずらに騒ぎ、慌てるだけでは意味はないが、新型コロナウイルス禍で危機に陥ったとき「正しく恐れ、対処する」ことを学んだのではなかったか。教訓は市民が新型コロナを必要以上に恐れずに厄災と向き合うだけでなく、事業者が事実を正しく知り、自社の力を再確認して、今後を展望した上で身の丈に合った複数の対処プランを用意しておくものでもあったはずだ。
コロナ禍で危機を迎えた際に一時的な赤字を段階的に黒字化した自動車関連部品も手がける県内のプラスチック製品製造会社は、今回の騒動でも自動車メーカーの動向を予想して対応策を検討。米政権の次の動きに備えている。事が起こってから動くのでは、いっときであれ遅れが生じやすい。それが事業継続の致命傷となる可能性もなくはない。最悪の事態を描き、会社の状態、従業員の生活の保持なども考慮しつつ、自社に適した手を事前に打つのは危機管理の面からも無駄にはならないだろう。
海外を含む最新の情報を得たいなら、日本貿易振興機構(ジェトロ)がホームページで情報を公開している。今月28日にはジェトロ奈良や県などが、米経済の動向に関する企業や金融機関、自治体関係者ら向けの勉強会を予定する。資金面で不安があるなら、影響を受ける事業者らを対象に融資相談窓口を設けている金融機関に当たっておく方法もある。
関税については政府間の交渉も継続中で、いまだ着地点は見えない。トランプ氏は近日中の新たな政策発表を示唆しているが、衝撃度は未知数だ。とはいえ、専門家の多くは、海外輸出を自社で行っていない中小、小規模事業者にもいずれ何らかの負の影響が及ぶのは間違いないとの見方を示す。ダメージをできる限り小さくするには、会社のかじを取る者の覚悟と腰の軽さが不可欠でもある。