金曜時評

SNS選挙 功罪見極め慎重に - 編集委員 高瀬 法義

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 参院選まで残り約2カ月。奈良市長・市議選も同日選で行われ、もうすぐ大和路に選挙の夏がやって来る。

 

 インターネットを使った選挙活動が解禁されて10年以上がたった。昨年の衆院選で「明るい選挙推進協会」が行った意識調査では、「政治や選挙の情報を何で得るか」の質問でインターネットがテレビに次ぐ2位となり、有権者に浸透して来たことがうかがえる。特に交流サイト(SNS)の発信力は、昨年の都知事選や兵庫県知事選など選挙結果にも影響を与えるようになった。各政党や候補者は、参院選でもSNSを使った発信に力を入れて来るだろう。

 

 「SNS選挙」は若者を中心とした有権者の関心を高め、投票率の向上が期待される半面、さまざまな問題も指摘されている。SNSには利用者の行動データを基に好みに合った情報を配信する仕組みがあり、受け手の考え方が偏りやすい。しかも流される情報の中には真偽不明なものやデマも多い。そうした情報環境は一部の熱狂的支持とともに意見の過激化や両極化を生み、対立する人への攻撃や誹謗中傷行為につながっている。

 

 現在は個人や新しい政治勢力の武器となっているSNSだが、今後、組織力や資金力を持つ勢力に活用されるようになれば選挙の公平性にも問題が生じるだろう。また、海外では外国からの選挙介入の疑惑も浮上している。

 

 こうした中、共同通信の世論調査では、選挙の際、真偽不明の情報がSNSで拡散することに「法律での規制が必要」を選んだ人が半数を超えた。国会でも与野党間で法規制の是非の検討も始まった。しかし、法規制には憲法が保障する「検閲の禁止」や「表現の自由」に抵触する恐れがある。フェイクニュースの拡散は問題だが、SNS事業者が選挙期間中の限られた時間の中で事実を確認するのは難しい。もし、国が真偽を認定することになれば、自由に意見を発信しようとする国民への萎縮効果になりかねない。さらに時の権力者の都合の悪いことは、隠される恐れもある。法規制はSNS選挙の功罪も見極めて、慎重に検討すべきだろう。

 

 SNSの中の情報を一つ一つを確認して事実の裏付けを取るのは困難で、選挙情勢の判断は難しくなっている。しかし、選挙における報道機関の果たすべき役割は変わらない。選挙の争点や立候補者の主張を公平に報道し、有権者の選択の一助になるための正しい情報を提供することを心がけたい。

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