第2次世界大戦中、ユダヤ人が大量虐殺さ…
第2次世界大戦中、ユダヤ人が大量虐殺されたアウシュヴィッツ強制収容所の隣に住む家族を描いた話題の映画「関心領域」が、県内でも上映されている。難解で地味な映画だが、全国で異例のヒットが続く。
家族の日常生活が淡々と描かれ、塀の向こうの収容所の様子は一切映さない。ただ、悲鳴や銃声、何かを燃やす焼却炉などの音だけがかすかに響く。
家族はそうした音に関心を示さないが、塀の向こうのことを知っている。家の主人は収容所長のルドルフ・ヘスだからだ。
その妻は収容者の物とみられる毛皮の品定めを楽しみ、子どもたちは拾った人の歯でおはじきのように遊ぶ。私たちと同じ普通の人たちによる無意識の残忍性が恐ろしい。
映画は収容所やナチスなど歴史的な背景の説明も一切行わない。しかし、登場人物たちの言葉によって、さまざまな想像が膨らむ。
それが可能なのは私たちが歴史を学んだおかげであり、この時代をまったく知らなければ映画のメッセージは伝わらない。歴史を学ぶことは大切であり、今なお世界で続く理不尽に無関心ではいけない。(法)