「妻は夫をいたわりつ、夫は妻を慕いつつ…
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「妻は夫をいたわりつ、夫は妻を慕いつつ―」。壷阪寺を舞台に夫婦愛を描いた人形浄瑠璃「壺坂霊験記」は、浪曲の名調子がよく知られる。
知事が代わってすっかり色あせたが、「奈良モデル」と聞くとこの一節が頭に浮かぶ。前知事の荒井正吾氏が市町村との関係をモデル化してそう名付けた。
前提としたのは県と市町村が上下ではなく対等であり、協力・共同の関係にあること。市町村合併が進まず、財政規模の小さい自治体が多い現状を踏まえた。市町村はどの事業を県と共同化するか決め、県は必要な支援を行う。
このモデルとおよそ正反対の発言が山下真知事の会見で飛び出した。「市町村長とは背負っているバックグラウンドが違う」。だから折り合わないという。
県内の首長から県の意思決定過程で地元自治体と連携するよう要望が相次いでいることについて、自分は全県的な視点で判断する必要があると突っぱねた。
県全体のためには地域の不満や犠牲はやむを得ないとも取れる。知事の発言は理屈だが、寅さんなら言うだろう。「それを言っちゃあ、おしまいよ」。 (増)