「お土産」という発想自体がよく分からな…
「お土産」という発想自体がよく分からない。岸田文雄首相がウクライナ訪問で持参した「必勝しゃもじ」が論議を呼んでいる。地元広島の名産品とはいえ、一般的にはあり得ない選択肢だろう。
仮に日本のいずれかの地域が侵略や住民の生死に関わる事態に見舞われているとして、「必勝しゃもじ」を手土産にするだろうか。贈られた側の苦笑いで済めばよい方だ。
ウクライナではロシアの侵攻から1年で7千人以上の市民が死亡したとされ、子どもの犠牲者も多い。その地の国民に寄り添う気持ちがあるのなら、手土産はもっと慎重に選んだろう。
しゃもじは宮島の名産で、「敵を召し捕る」の語呂合わせから、日露戦争時には出征兵士が厳島神社に奉納したという。選挙やスポーツでも激励に使われる。
岸田首相の国会答弁では祖国や自由のために戦うウクライナの人々に敬意を表す意図があったというが、自身の署名入りとは念のいったことだ。
戦禍にあえぐ国に常識外れの手土産を持参する首相が自国の国民生活をどこまで理解できているのか、少なからず不安になった。(増)