既成権威を打ち破った改革者とされる戦国…
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既成権威を打ち破った改革者とされる戦国武将、織田信長。それを表すエピソードの一つが、東大寺正倉院の香木「蘭奢待」の切り取りだ。
正式には「黄熟香」といい、「天下一の名香」として多くの権力者が欲してきた。小説などでは信長が朝廷に迫り、強引に切り取ったと描かれる。
その蘭奢待と並ぶ名香木「全浅香」が、きょう29日から始まる正倉院展で出陳される。長さ約105センチで、「紅塵香」「紅沈香」という優雅な別名を持つ。
知名度では蘭奢待に負けるが、全浅香の方が由緒正しい。詳しい献納時期が分からない蘭奢待に対し、全浅香は聖武天皇の七七忌に光明皇后が献納した宝物のリスト「国家珍宝帳」にも記されている。
当然、信長も欲したはずだが、一説によると、「前例がない」と切り取らず見るだけにとどめたという。「暴君」信長とは、かけ離れた姿だ。
最近の研究では、信長は朝廷を尊ぶなど、既成権威とも折り合いをつけて改革を進めたとする説が有力だという。全浅香に対する態度も、その説と合致する。正倉院宝物は天下人の本当の姿も教えてくれる。(法)