高取町の壷阪寺は、浄瑠璃「壺坂霊験記」…
高取町の壷阪寺は、浄瑠璃「壺坂霊験記」の舞台として知られる。盲目の沢市とお里夫婦の物語は「妻は夫をいたわりつ」の名調子で浪曲でも人気を博した。
毎日明け方に家を抜け出すお里を沢市は「好きな男でも」と疑うが、お里が沢市の目の回復を本尊の十一面千手観音に願掛けしていると知り、共に参拝するようになる。
ところが満願の日、沢市はお里の将来を思って身を投げ、悲しんだお里も後を追う。二人を救ったのは観音様の慈悲の心だった。
生還した沢市の目は見えるようになり、お里と喜びをかみ締める。同寺の本堂横に二人が身を投じたと伝わる谷があり、本尊は今も目のご利益で信仰が厚い。
夫婦愛ではないが、この奇跡を思わせる出来事が9月に十津川村であった。絶景の名所「谷瀬のつり橋」から落ちたと思われる女性が助かった。
つり橋は高さ約54メートル。河原にいた人の話などから県警は女性が橋の上から落ちたとみているが、高さを考えれば十中八九も助かるまい。川の流れが幸いしたのか、まさに奇跡だろう。見えない手がもしや、と思わせる出来事だった。(増)