奈良県初の高校生のバスケットボールB級公式審判員・奥村楓人さん - 輝く奈良の元アスリート

元主将でチームけん引、1月の県高校新人大会から活動開始
昨年11月に現役高校生でJBA公認の公式バスケットボール審判員のB級ライセンスを取得し、県で初の高校生でのB級公式審判員となった。1月の県高校バスケットボール新人大会から公式審判員として活動を始めている。同校では前主将としてチームを引っ張ってきたが、新たな道としてプレーヤーではなく審判員として、大好きなバスケットボールに携わり続けることを選んだ。
公式審判員にはE級~S級の区分があり、最上級のS級はトップリーグをはじめとしたすべての試合を、A級は準プロや全国大会、B級は主に近畿などの地域ブロック大会を主に担当できる。B級公式審判員は県内に約70人おり、その中で10代は奥村さんのみ。全国的にも10代のB級審判員は10人程度しかいないという。
最初に審判員の資格を取ったのは高校1年の時。元々は選手として、バスケットボールの知識を増やすために審判資格を取り視野を広げようという思いからだった。また中学生の頃から将来は体育の教員になりたいという夢があり、ゆくゆくは生徒を指導するためにも役に立つだろうと考えた。「その時は、B級まで上がるとは思いもしなかった」と笑う。
中学の時は畝傍中学で副主将、大和広陵高校では主将を務め、チームをけん引したが、身長があまり高くないことなど、「将来的に選手として続けるのは限界があると感じていた」という。自分の身体能力では上のカテゴリでプレーしていくのは難しい。その中で、バスケットボールにずっと関わっていくために、審判員のライセンスを上げていくことを選んだ。「(選手として)諦めたんでしょうかね」と話すが、むしろその決断はバスケットボールを諦めなかったことの表れだろう。
自覚と責任持って 「自分の笛に自身」へ努力惜しまず
初めて県の公式戦で審判員を務めた時には「わくわくした。審判のやりがいは一つの試合を成り立たせることなので、そこに魅力を感じると共に、自覚と責任を持って臨まねばという思いがあった」と話す。またその際の動画を見返すなど、反省点を次に生かすべく真摯(しんし)に経験を積み重ねている。審判で大事なことは「審判同士のコミュニケーションや、ミスしないこと、自分の笛に絶対の自信を持つこと」。そのための努力は惜しまない。また審判員として常にコートを駆け回るための体力づくりや、コート上で人に見られるためスタイルの維持にも余念がない。
ゆくゆくはS級に
将来の目標について、今春から進学する天理大学で教員になる勉強をしながら、並行して「A級ライセンスを目指す」という。各カテゴリの審判長からの推薦を受けた上で厳しい試験を突破しなければならない狭き門だが、「在学中にはA級になり、ゆくゆくはトップリーグを担当できるS級審判員になりたい」と力強く語る。
奥村さんからチームを引き継いだ大和広陵高校バスケットボール部の近藤輝明現主将は「最後の大会でも試合最後に3ポイントシュートを決めてくれるなど、頼れる主将だった。明るくて話しやすい先輩だった。審判資格を生かして練習ゲームでも笛を吹いてくれていた」と一緒にプレーした時間を振り返り、「自分たちも県ベスト4を目指すので、A級ライセンス目指して頑張ってください」と激励した。また同部顧問の福村智明教諭は「謙虚な心を忘れず、自分の目標に向かってしっかり頑張ってほしい」とエールを送り、新たなステージで活躍を始めている教え子の姿を喜ぶ。(岩本淳)
2025年3月5日付・奈良新聞に掲載