近鉄けいはんな線 県内沿線巡り(奈良市・生駒市)
「奈良旅絵巻」に感動 最新技術や食に触れる
書家の逢香さんが県内各地を訪ねて、地域の魅力を発信する「逢華の華やぐ大和」。今回は、4月13日の開幕まで約1カ月に迫った「2025大阪・関西万博」の会場となっている大阪・夢洲(ゆめしま)の最寄り駅、大阪メトロ中央線夢洲駅まで、県内から乗り換えなしに行ける近鉄けいはんな線の県内沿線を巡りました。(久後 力)
ラッピング電車で出発
奈良市中登美ケ丘6丁目にある近鉄けいはんな線学研奈良登美ケ丘駅は夢洲駅までの始発駅。逢香さんは夢洲駅からやってきたラッピング電車を迎えた。
明奈良県から大阪・関西万博会場の夢洲駅へ、始発駅となる近鉄けいはんな線学研奈良登美ヶ丘駅
「奈良旅絵巻」と名付けられたラッピング電車は、近鉄が万博来場者に向けて沿線の主要観光地である奈良をPRするために2月25日から運行(6両)を始めている。車両外観には「奈良」や「吉野」などの書と、「鹿」など奈良の魅力を表現した墨絵を、それぞれの風景とともに逢香さんがデザインした。
逢香さんがデザインしたラッピング電車「奈良旅絵巻」
駅のホームに電車が到着すると、「作品がこんなに大きくなるものだと驚きました。これから多くの人に見ていただくと思うと感動します」と逢香さん。デザインが2両で1セットになっている車両の外観を見た後、電車に乗り込み、車内に掲出されている奈良の観光ポスターなどにも目をやった。
奈良先端大へ
次の駅、生駒市上町にある学研北生駒駅では北東へ徒歩約20分の奈良先端科学技術大学院大学(同市高山町)へ。逢香さんは情報科学領域の研究室「インタラクティブメディア設計学」(研究スタッフ=加藤博一教授ら)を訪問し、研究室の学生3人から生駒市の観光名所を紹介するVR(仮想現実)や、触れ合えるロボットについて説明を受け、体験した。どちらも万博会場に出展される。
博士後期1年生の清水祐輝さん(27)は「ここではVRやAR(拡張現実)、ロボットを使って主に社会課題を解決する研究をしています」と紹介。生駒市と協力して制作したVRでは、宝山寺や生駒山上遊園地などの名所を体感できると解説した。
早速VRゴーグルを装着した逢香さんは「訪れている感がすごい。この映像は海外の方にも喜ばれると思います」と感動した様子。清水さんは「生駒市の魅力だけでなく、パワーも伝えられれば」と応じた。万博会場では同市のブースで4月19~22日にVR体験ができるという。
VRゴーグルを装着して生駒市内観光を楽しむ逢香さん(左)
ロボットに感動
一方、同研究室の学生が主体となって取り組んでいるロボットについて清水さんは、「キーウィ」と紹介。ニュージランドに住む大きくて飛べない鳥、キーウィのロボットで、卵を産むことができると話し、実際にロボットを動かした。
「キーウィ」ロボットを開発した奈良先端大情報科学領域研究室の学生と卵を手にする逢香さん
逢香さんがロボットの背中をなでると、「キーキー」という鳴き声とともに首を動かし始め、しばらくすると尻から白い卵がポロリ。様子を見ていた逢華さんは「よく頑張ったね」とねぎらった。清水さんは「高齢者にロボットで心を癒やしてもらえればうれしい」と話した。
ロボットは餌やり体験ができる「ペンギン」もあり、「キーウィ」と共に、万博会場の「フューチャーライフヴィレッジ」に出展する同研究室のブースで7月13日に体験できるという。
酒蔵で味わう古代酒とまかないランチ
最後は同市白庭台6丁目にある白庭台駅から南へ徒歩約15分の中本酒造本店の新施設「作宝楼(さほうろう)」を訪れた。
同社は江戸時代に創業して約300年の歴史がある酒造会社。「作宝楼」は奈良時代の左大臣、長屋王の邸宅にあった建物の名前で、同酒造の隣に立つ古民家(母屋)を改装。昨年10月から県内の食材などを使った「酒蔵まかないランチ」を提供している。ランチとともに、奈良時代のレシピを参考に同酒蔵が醸造している日本酒「長屋王」なども楽しめる。5月まで予約で満席という。
「酒蔵まかないランチ」を提供する「作宝楼」
逢香さんはグルメ通の長屋王が食べていたと伝わる「蘇(そ)」(古代のチーズ)と「豆醤(まめびしお)」(古代のしょうゆ)や「長屋王」をランチ調理担当の岸部友里さん(38)から提供されて味わった。
日本酒「長尾王」を味わう逢香さん。左は岸部さんと片岡さん
「日本酒(長屋王)は少し甘くて、後にうまみが残り飲みやすい。ひしおの風味の強さを包んでくれる感じがする」と逢香さん。蔵人の片岡智足さん(35)は「長屋王は濃いお酒なので、日本食だけでなく洋食にも合います。食事とペアで楽しんでもらえたら」と話した。
ランチの提供に先行して、同酒蔵の代表銘柄「山鶴」など約30種類の日本酒の販売所もオープンしている。
逢香の目
作品を手にする逢香さん
「生駒」から「夢洲」へ、蛇行した線路を走る電車をデザイン。線路に沿って「奈良から」「未来へ」「夢の島へ」と書き添えた。逢香さんは「今回は奈良時代のお酒を楽しめ、ロボットを作る未来志向の学生さんにも出会えた」と笑顔。「私も未来に向かって何ができるのか考えていきたい」と意欲を見せた。
メモ
◆書家/逢香(おうか)
奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使、(一社)モノモン代表。
「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で2025年3月11日に放送されました。