こだわりのランドセル 鞄工房山本 長年の使用に耐える - 奈良の自慢企業(30)
多くの人にとって「初めての一生もの」となるのがランドセルではないだろうか。
奈良県橿原市にある鞄(かばん)工房山本は革製ランドセルを手作業で自社製造している鞄メーカーだ。代表の山本一暢氏の祖父が始めた革製の学生鞄やビジネスバッグの製造がルーツにある。1967年にランドセル専門にシフトすると、高度成長期の真っただ中でもあり、出生数も200万人に届きそうな時代、ランドセルは作れば作っただけ売れたそう。
教科書サイズの大型化や、大手量販店の市場参入によって少しづつランドセルも大型化し、デザインや装飾、カラーも豊富になったが、鞄工房山本のランドセルは本革使用にこだわり、奇をてらわないオーソドックスなシルエットで、6年使ってもデザインが古びれることはない。製造についても、革の裁断から最終仕上げまで全て自社工房内での手作業で、職人が一つ一つ手間と時間をかけて作っている。
例えば大きなふたとなる「かぶせ」のへりも、薄い革を巻くのではなく、丁寧に裁断して面取りしてからニスを3重に塗る、手のかかった製法を守り続けている。素材は牛革がメインだが、中には馬のお尻部分の革である最上級のコードバンを使ったものもあり、価格帯もさまざまだ。
良質な芯材と革を使って手作業で作られたランドセルは長年使用しても型崩れすることはない。取材時に山本社長が小学校で使っていた30年前のランドセルを見せてもらったが、型崩れすることもなく凜としていた。そんな6年間使ってもしっかりしている鞄工房山本のランドセルは、役目を終えた後もミニチュアランドセルやペンケースに加工するリメイクサービスもある。
ランドセルの製造以外に「香久山鞄」のブランドで革製、帆布製の鞄や小物の販売も行っているほか、最近ではイタリアのデザイナーとのコラボレーションによる新たなブランド「MONTBOOK(モンブック)」も立ち上げていて、一枚の革を時間をかけて木型で成形していく「革絞り」という技法を用いて、飽きが来ず長年使っても味が出るデザインを生み出している。
また「藤原京菜園」としてトマトの自家栽培もしていて、将来はイチゴ農園も開園する予定。藤原宮跡に新たな観光名所ができる日も近い。
(帝国データバンク奈良支店長・近藤穣治)
【メモ】
鞄工房山本
奈良県橿原市南浦町899