歴史文化

質問「親の葬儀を任されました。葬儀会館をどこにしようか迷っています」 - 「我知(がち)―お坊さんに聞いてみる」(2024年10月2日)

関連ワード:

【質問】

 親の葬儀についての相談です。親も80代になり、終活について話し合う中で、近年の傾向と子どもに負担をかけたくないとの思いから、家族葬を希望し、会館は私に任せると言ってくれています。私も家族葬がいいと思っており、親の代わりに加入していた近くの大ホールの互助会を解約したのですが、解約時に「一番安いコースに入っておられましたね」などと失礼なことを言われ、大変不愉快な思いをしました。

 

 最近検討している会館は、少し離れていることもあり「参列していただく方に負担になるのでは」などの意見を親や親類から聞くようになりました。親は社交的で、親交のあった方々に参列していただくには、契約していた近くのホールで執り行った方が良いのか、少し離れていますが私が検討している会館で執り行う方がいいのか迷っています。検討中の会館は担当者も丁寧で、安心して気持ちよくお任せできそうな感じがしています。親や参列していただく方のために、不愉快な思いをした近くの会館で執り行った方がいいのでしようか。アドバイスよろしくお願いいたします。

(50代男性)

 

【回答】

 辻 明俊(興福寺 執事長)

 

【我知なヒント=人生の旅は死をもって完結する

 

 超高齢化社会。老後を考えるだけでも大変なのに、死後の心配までせねばなりません。そんな煩わしいことはない、と言いたいのが世間の実状でしょうか。

 

 いつごろからか、葬儀の在り方や考え方は、家族構成の変容とともに、親族、または地域が中心となって執り行う儀礼から、葬儀業者に依頼するのが一般的になりました。

 

 結果として、家庭や地域環境に合わせた葬儀会館での葬式が瞬く間に広がり、今ではすっかり定着しました。かつては亡くなれば生まれ育った家、もしくは菩提寺などで葬式を行うのが普通でした。子どもの頃、実家の寺でお通夜、葬式を営むことがしばしばありました。集まったご家族が夜通し故人を偲(しの)ばれていたのを記憶します。

 

 盛大に行っていた式も、なるべく静かに、次に小さく、つまり簡素化が進んだように感じます。一方、葬送の選択肢はますます広がっています。樹木葬に始まり、宇宙葬なるものもあるというから驚きます。最近ではお通夜や告別式を行わない直葬という見送りも増えているのだとか…。これにはもう少し議論の余地があってよいと思いませんか。もとより葬儀は悲しみや気持ちを整理するため、残された記憶を共有するための時間と空間なのですから。

 

 今回の相談をぼうっと眺めていたら、ふと、十数年前に亡くなった知人の顔が思い浮かびました。大病を患いながらも、片時もそぶりは見せない芯の太い人でした。今も耳に響く言葉があります。「おれは、死ぬことは怖くない。でも、お迎えのあと、残された人には迷惑をかけたくない、それに好き勝手にやられても困る」。なんと、その人は棺桶までオーダーして浄土へ旅立たれました。

 

 私たちは生まれる場所を選べません。だからこそ【死ぬ】ということについては、本人の声に耳を傾け、その意思を第一にすべきだと考えます。前置きが長くなりましたけれど、すでに答えは“ある”のではないでしょうか。親族や会葬に来られる方へ気配りをするのも喪主の大切な務めです。ここはぐっと堪え、近くの会館にもう一度相談してみてはどうですか。

 

 昨今、葬儀がビジネス化して、このような悩みや問題はさらに増えるかもしれません。やがて去り行く命。後悔のない終活を心掛けたいですね。

 

【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】

奈良の僧侶が悩み相談や質問に答えるコーナー。お坊さんに相談したい、 仕事や人間関係、恋の悩み、人生相談や信仰・仏教の教え、お寺への質問などが対象です。お坊さんへの質問を募集しています。採用は弊社と回答者で判断し、掲載の有無や掲載日についてお答えすることはできませんのでご了承ください。

 

【回答者】

興福寺 辻 明俊さん

金峯山寺 五條 永教さん

秋篠寺 堀内 瑞宏さん

宝山寺 東條哲圓さん

こちらの記事も読まれています

特集記事

人気記事

  • 奈良県の名産・特産品・ご当地グルメのお取り寄せ・通販・贈答は47CLUB
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド