質問「自宅がごみ屋敷のよう。整理整頓ができません。どうすればいいでしょうか」 - 「我知(がち)」-お坊さんに聞いてみる(2023年12月6日)

質問
整理整頓ができず自宅がごみ屋敷のようになっています。毎月、友人が来て一気に掃除するのですが、すぐにごみがたまります。断捨離もしているのですが、どうすればよいでしょうか?
(男性 40代)
回答 辻 明俊(興福寺 執事長)
【我知なヒント=何一つあの世へは持って行くことはできない】
規律正しく生活するのは大事ですけれど、たまに疲れちゃいますよね。断捨離という言葉は2010年前後あたりから言われるようになったそうですが、よくよく考えれば、ここ数年、ずっと不景気と言いながらも物があふれる状況というのは、ある意味贅沢(ぜいたく)な話です。ところで、その「ごみ」というのは本当に不要なモノなのか、それとも物欲に任せ、あれもこれもと、ついつい集めてしまったモノなのでしょうか。
私の机の周りにも、使わない、読まない、物、物、物…。大にぎわいです。それでも年末の足音が近づいてくると、大掃除という言葉の力を借りて、ここぞとばかりに「えいっと」片付けを始めます。
掃除をすれば気分はスッキリします。でも本当に捨ててよいのか、と迷いが生じ、なかなか片付けることができない人もいるでしょう。中国の古典『呻吟語(しんぎんご)』の中に「雨の恵みは、潤い過ぎると万物の災いとなる」という言葉があります。
私たちの欲望は際限ありません。おいしい料理であっても、食べ続ければお腹が膨れ苦しくなります。ほどほどにしておけばそうはなりません。つまり、欲する心のはたらきを静かにすることが肝要なのです。
たくさんの物を持ち、気持ちは満足しても、それは現世に限ることです。『呻吟語』を著した呂新吾はこうも残しています。「臨終の際は何一つ持って行くことはできない。でも、あの世に持って行けるものが一つあるとするなら、それは自身の心だけ」と。
私たちは何一つ持たず生まれてきます。本当に必要なものを見極め大切にしてください。あっ、友達の優しさもね。
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【回答者】
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【掲載日】
毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル