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興福寺で「慈恩会」 僧侶の大森俊貫さん、生涯に一度きりの試験「竪義」合格 - 「皆さまのおかげ」と笑顔

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「竪義」を終えて仮講堂を出る大森俊貫さん=13日、奈良市登大路町の興福寺

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 法相宗の宗祖・慈恩大師の遺徳をしのぶ「慈恩会(じおんね)」が13日夜、奈良市登大路町の興福寺で営まれた。法相宗の僧侶が生涯に一度だけ受けることができる口頭試験「竪義(りゅうぎ)」が3年ぶりにあり、大森俊貫(しゅんかん)さん(35)が合格を果たした。

 

 竪義は、法相宗では薬師寺と興福寺が毎年交代で営む慈恩会の法要後、資格者がある年のみ実施。「(正)義を竪てる」という意味で、興福寺では入山してから10年を目安に受けることができる。法相宗の教えや経典を覚え、先輩の僧侶から出される問いをすべて暗記して答えなければならない。満行すると塔頭(たっちゅう)の住職になる資格が与えられる。かつては失敗すれば寺を追放されたという厳しい試験。

 

 竪義の前には、21日間の「前加行(ぜんけぎょう)」を受けることが決まっており、俗世界と結界した行部屋の半畳ほどのスペースに座り、問答集を暗記、本行に向けた準備に取り組む。冷たい井戸水で行水をして一日を始め、一日二食、無言で過ごし、横になって寝ることも許されない。

 

 また、1と6のつく日は春日大社や境内の諸堂を約3時間かけて巡拝する「大回り」を行う。巡拝中は話しかけられても話してはいけない決まりだ。世話役の童子は市在住の大学生、吉岩観賢さん(21)が務めた。

 

 13日午後9時すぎ、白装束姿で仮講堂内へ入った大森さんは論義台の上で約1時間半にも及ぶ問答に挑んだ。最後に「精義」と呼ばれる役目の僧が「十は得たり、一つは未判」と合否を判定。同11時ごろ、満行を迎え堂外へ姿を現した。

 

 竪義から一夜明けた14日、取材に応じた大森さんは「満行できたのは仏様、春日の神様、指導くださった皆さまのおかげです」とにこやかに語った。

 

 7日から3日間にわたる春日大社への夜の社参は、暗闇でも恐怖を感じない神秘的な景色だったという。「初日に春日神からいただいた浄火があることで、行の間は神様が近くにいてくださるという安心感があり、辛くしんどいと感じることは少なかった」と振り返る。

 

 本番前は「寒さと緊張でずっと震えていた」と言い、「入堂の時、前を歩く多川俊映寺務老院の姿を見て師匠が進んだ道に自分も続きたい」と意を決して望んだという。「行を終えたから成長したわけではない。経験できた感謝を胸に今後も励んでいきたい」と力強く話した。

 

 大森さんは千葉県出身。大正大学仏教学科を卒業後、2013年に興福寺に入山した。

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