奈良のシカ 奈良県知事が「特別柵」見直しに言及 「捕獲した鹿を全頭収容する枠組み自体に無理が生じているのでは」
奈良の鹿愛護会が運営する「鹿苑」に収容された鹿にエサが十分に与えられないなど虐待の疑いがあるとして、奈良県や奈良市が調査をしている問題で、山下真知事は31日の定例記者会見で、農作物を食べるなどして捕獲された鹿を収容する「特別柵」について「捕獲した鹿を全頭収容する枠組み自体に無理が生じているのでは」と述べ、見直しの必要性に言及した。
奈良公園周辺の鹿は「奈良のシカ」として天然記念物に指定されている。一方、農作物への被害が深刻化し、1979(昭和54)年に奈良公園周辺の農家が損害賠償を求めて提訴。その際の和解条項などに基づき、鹿の生息地区が「重点保護」「保護」「緩衝」「管理」の四つに区分され、それぞれの保護管理の指導基準と捕獲に関わる運用基準が示された。このうち、「緩衝地区」で農業被害を起こした鹿は鹿苑の特別柵に収容し、保護されている。
山下知事は「年々、特別柵の鹿の収容数が増えており、スペース的にも過密状態だった。野生の鹿なので強い個体と弱い個体もあり、特別柵に全頭収容すること自体に無理が出てきているのでは」と指摘。
県は、鹿への虐待通報を受けて行っている調査の結果を11月6日に公表する予定で、同結果を踏まえ、今後の特別柵の保護管理のあり方を県や奈良市、春日大社に有識者を交えた委員会で検討していくことになるとの見通しを示した。