上柿鉄工建設(田原本町)上柿範兼社長 最終顧客の立場で良品質な鉄骨を提供 「ものづくり」の精神で難題にも果敢に挑戦 - トップに聞く(6)
JR奈良駅、奈良公園バスターミナル、ユニバーサルスタジオジャパンの「ウォーターワールド」のセット―。多くの人が利用するこれらの鉄骨建築物を手掛けたのは、奈良県田原本町笠形にある「上柿鉄工建設」だ。同業他社が受注を避ける難易度の高い案件も積極的に引き受け、最終顧客の立場に立った仕事で実績を伸ばしてきた。上柿範兼社長(55)は「どんな依頼にも尻込みせず、可能な限り対応し、ワンランク上の仕事に果敢に挑戦していく」と力を込める。
同社は、上柿社長の父(現会長)が1972(昭和47)年4月に創業。庭の塀や扉、農業用倉庫を製作・施工する鉄工所としてスタートした。10年後の82年から建築鉄骨の製作に本格着手し、その後、施工も手掛けるようになった。
現在の主力事業は、鉄道関連の鉄骨製品の製作・施工。JR奈良駅をはじめ、JR西日本エリアの駅舎建築を多数担当してきた。近年では、JR大阪駅北地区の「うめきたエリア」の開発事業にも携わっている。奈良公園バスターミナルやユニバーサルスタジオジャパンの「ウォーターワールド」のセットのほか、ビルやマンション、商業施設、学校施設、園舎、工場、橋梁、歩道橋などの製作・施工も手掛ける。
同社の経営理念は、「エンドユーザー(最終顧客)の立場に立ち、良品質な鉄骨を提供する」。上柿社長はこの理念に込めた思いを、「最終的に施設を使う人の立場に立てば、たとえ見えなくなる部分であっても、手を抜いた仕事はできなくなる」と話す。
「不可能に果敢にチャレンジする」を合言葉に、難易度の高い特殊な鉄骨建築物に進んで挑戦するのが同社の社風だ。「鉄骨に関することで『できない』とは言いたくない」(上柿社長)という鉄骨加工業者としてのプライドから、クライアントの高度な要求や難題には社員一丸となって知恵を出し合い、実績を伸ばしてきた。「困難な案件であればあるほど、完成した時の感動は大きい」と語る。
経営理念を実現するための行動指針として、「UEGAKI “Circle”FIVE」を設定。「先見力」「技術力」「創造力」「人間力」「対応力」の五つの力を軸とし、同社の原動力となっている。
上柿社長は「人間力が最も大切」と強調し、定期的に研修会を開催するなど、人材育成に力を入れる。若手社員には伝えるのは「ものづくりの楽しさや素晴らしさ」。同業他社と比べ、現場で働く女性社員の比率が高いのも同社の特徴。女性専用のトイレや休憩室を設けることで、女性が働きやすい環境を整えている。
小学生の頃から家業の鉄工所の仕事を手伝っていたという上柿社長。中学2年の時に跡を継ぐことを決め、高校と大学で建築を学んだ。
趣味はスキーとハーフマラソン。10年後の65歳までに富士山にあと2回登ることを目標にしている。
同社は昨年、創業50周年を迎えた。上柿社長は「いつまでも『ものづくり』の精神を忘れることなく、良品質な鉄骨を提供していきたい」と語る。(加藤浩司)
上柿鉄工建設
奈良県田原本町笠形141の1
電話:0744(32)8024