【ことなら'24春】豊臣秀長ゆかりの大和郡山市 今年は市制70周年・金魚伝来300年 - 訪ねる古都なら。
2026年NHK大河ドラマは「豊臣兄弟!!」に決定
今年で「市制70周年」を迎えた大和郡山市。市に金魚が伝来して300年の記念の年でもあり、さまざまなイベントが予定されている。さらには2026年のNHK大河ドラマで「豊臣兄弟!」の放送が決定。豊臣家ゆかりの地として注目を集める同市の魅力を紹介する。
「日本さくら名所100選」の郡山城跡の桜
秀長が整備した百万石の城下町 郡山城跡
郡山城は、織田信長の重臣であった筒井順慶が1580(天正8)年に入城し大和国郡山城主となる。1585(天正13)年には、豊臣秀吉の弟である豊臣秀長が入城し、大和・紀伊・和泉の3カ国100万石の領主として豊臣政権を支えた。
江戸時代には、郡山藩として藩庁も置かれるなど城下町として栄え、現在の市の礎を築いたとされる。一昨年の国史跡指定を受け、郡山城跡公園の整備が現在進められている。全面開業するのは2025年4月の予定だが、城郭のお堀に面した厩曲輪(うまやくるわ)・緑曲輪など約1万5000平方㍍の一部エリアが、昨年先行してオープンした。
遊歩道で園内の散策が楽しめるほか、広大な芝生エリアの中央には、市の観光情報や郡山城跡の歴史が学べる「郡山情報館」も設置されている。
天守台展望施設がある本丸の方に足を延ばし、極楽橋を渡ると、風情ある町家風の建物が目を引く「番屋カフェ」が見えてくる。その名の通り建物は、郡山藩最後の藩主である柳沢保申が住んだ武家屋敷の長屋門の一部。
名物の「御殿カレー」は、スパイスを独自にブレンドした本格派。十六穀米とピクルス、フライドオニオンの香ばしさが相まり、食欲をそそる。また、季節ごとの限定メニューも人気で、緑あふれる自然の中のテラス席で、ゆったりくつろぐのがおすすめ。
すぐそばの毘沙門郭(びしゃもんくるわ)跡にあるのは、地方史誌専門図書館の「柳澤文庫」。郡山藩旧藩主である柳澤家から寄贈された歴代藩主の書画や古文書など、数万点に及ぶ資料が保管されている。
今年は江戸時代の柳澤家郡山藩初代藩主・柳沢吉里が1724(享保9)年に甲府から同市へ入城して300年。記念の特別展開催のほか、公用記録「福寿堂年録」(県指定文化財)の文字を使用した期間限定の御城印(500円)も販売している。訪れた際には、ぜひ手に入れたい。
郡山城跡公園は早春の時期の梅林に始まり、「日本さくら名所100選」に選ばれた桜、新緑に秋の紅葉と、一年を通じて四季の移ろいが楽しめる。
ライトアップされた郡山城跡天守台
「金魚ストリート」を散策 花街の余韻も
近鉄郡山駅から続く、やなぎ町商店街の通りには、城下町の趣きが今も残る。老舗の呉服店はじめ、雑貨や土産、飲食店など約35店舗が軒を連ね、賑(にぎ)わう。
通りは「金魚ストリート」としても知られ、金魚カフェや金魚改札機に灯籠(とうろう)などのオブジェは、見ていて楽しい。その中でも、金魚すくい道場として知られる「こちくや」は、数多(あまた)の名人を輩出した地元の名物店。誰でも気軽に金魚すくいが楽しめるほか、店内には金魚関連の土産物がズラリと並ぶ。道場主の下村康氏さんは、金魚すくいの第一人者。熟練の技を、ぜひ体験してほしい。
商店街の通りからJR郡山駅の方へと歩き、路地を入ると、登録有形文化財の「町家物語館」(旧川本家住宅)がある。1924(大正13)年に本館が完成した、当時としては珍しい木造三階建てで、かつて遊郭として一世を風靡(ふうび)した。1958(昭和33)年に廃業した後は、下宿となり、客間は貸し間として利用されてきた。遊郭建築ならではの造形美と、清廉した佇(たたず)まいに、今もなお当時の花街の繁栄を偲(しの)ぶことができる。
今年で金魚伝来300年
登録有形文化財の「町家物語館」
義経の悲劇しのぶ 源九郎稲荷稲荷神社
「日本三大稲荷」の一つにも数えられる源九郎稲荷神社。源九郎狐(ぎつね)や、綿帽子を買った狐の伝説が有名で、源義経が兄頼朝との戦の際には、何度もこの稲荷に助けられたという伝説が残る。
1585(天正13)年、源九郎と名乗る白狐が、大和国の長安寺村の僧の前に現れ、「稲荷を郡山城の南に祀(まつ)れば城の守護神になろう」と告げた。城主の豊臣秀長はその話を聞き、城の南に洞泉寺を建立し、境内に源九郎稲荷大明神を祭らせることで、城の鎮守としたと伝えられている。家内安全、商売繁盛、開運招福の御利益があるとされ、秀長ゆかりのスポットとして、こちらも押さえておきたい。
源九郎稲荷神社