ロシアの作曲家、ショスタコービッチの交…
ロシアの作曲家、ショスタコービッチの交響曲第5番は、ロシア革命20周年に合わせて首都レニングラードで初演された。日本では「革命」の副題で知られる。
当時のソ連はスターリンの独裁時代。ショスタコービッチはそれまでの作品が共産党の機関紙で「西欧かぶれ」と批判され、強制収容所送りを覚悟しなければならない状況だった。
そんな中、起死回生を懸けて発表した第5番は、「社会主義リアリズム」に満ちた傑作として国民から熱狂的に受け入れられた。
苦悩から歓喜への流れはベートーベンの交響曲に通じるといわれるが、本人は死後発表された回想録で「強制された歓喜」とし、「ムチ打たれ『さあ、喜べ喜べ、それがお前たちの仕事だ』と命令されるのと同じ」と述べている(志鳥栄八郎「名曲ものがたり」)。
それから85年。プーチン大統領指導下のロシアはウクライナに侵攻し、ロシアの音楽家の多くが活動の場を失った。
ショスタコービッチの真意は今も謎だが、作品や演奏にメッセージが込められるとするなら、その「声」に耳を傾けてみたいとも思う。(増)