能登の銘酒復興へ、『風の森』が『奥能登の白菊』を支援
今年1月の能登半島地震で被災した酒蔵を支援するため、「風の森」ブランドで知られる油長酒造(奈良県御所市、山本長兵衛社長=13代目蔵元)は被災した蔵の酒米や酵母を使って能登の銘酒「奥能登の白菊」を自社の蔵で再現。また能登と奈良とそれぞれの原材料をコラボした酒を作り上げた。
「能登の酒を止めるな!」 オリジナルの銘酒を再現
被災により酒造りができなくなった酒蔵の復興支援策「能登の酒を止めるな!」の一環。全国の酒蔵に協力を呼び掛け、共同で被災蔵のオリジナルの酒を再現、またコラボレーションした酒を醸造して市場に流通させるプロジェクトで、奈良県からは油長酒造が手を挙げた。
油長酒造と共同醸造を行ったのは石川県輪島市の白藤(はくとう)酒造(白藤喜一社長=9代目蔵元)。今回の地震では店舗などの建物が倒壊したほか、酒造りに必要な設備などが被災。水の供給は仮復旧したものの現在も酒造りができない状況が続いている。
油長酒造では今年7月から、自社蔵を使って「奥能登の白菊」の再現に兆戦。被災を免れた米「山田錦」と上品でさわやかな香りが特徴で石川県を代表する「金沢酵母」を使って仕込みを始めた。
しかし、仕込みでは酒造りで重要な水の違いが大きな課題に。能登の仕込み水が「軟水」なのに対して、「風の森」の水はマグネシウムなどを多く含む「超硬水」。濾(ろ)過技術で硬度を下げるなどの調整を加えて現地の味に近づけるように工夫を重ね、もろみの具合なども白藤社長らに相談しながら完成させた。
『風の森』とのコラボ酒誕生 「超硬水」と「金沢酵母」の出会い
一方の「風の森」とのコラボ酒は、オリジナルで使われた山田錦と金沢酵母を超硬水で仕込んでおり、無濾過、無加水の「生酒」が楽しめる。
新酒の初搾(しぼ)りに立ち会った山本社長は「風土の違いがある中で、緊張もあったが、とても良い経験、勉強をさせていただいた。少しでも復興の役に立てれば」とエールを送った。
白藤社長は「日本酒発祥の地・奈良の皆さんと酒造りができ楽しかった。(新酒は)さわやかな香りもあって、上品ですっきりとした飲み口」と満足のできばえ。「来年には、少しでも自分の蔵で酒が仕込めたら」と意欲をみせていた。
今回搾られた酒は2本(1本720ミリットル)セット6600円(税込み)で、今月10日から両蔵の特約店などで販売する。
問い合わせは、油長酒造、電話0745(62)2047。
奈良県御所市にある油長酒造