経済

町工場から50年で10億円の新工場に「オオタ」 - 奈良の自慢企業(24)

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五條市に建設されたオオタの本店兼工場

 奈良県五條市に本店兼工場を構えるオオタは、今年で設立50周年を迎えた金属製品塗装業者だ。高度成長期の真っ只中だった1965(昭和40)年に、太田義隆社長の祖父が大阪府東大阪市で金属製品の塗装を始めたもので、当時は家族経営の小さな町工場だった。

 

 5人兄弟の長男だった太田正春氏への代替わりを経て、徐々に規模も拡大しながら、主に大手家電メーカーのヒーターの部材やステレオスピーカーなどの塗装を行っていた。74(昭和49)年には大阪府八尾市に自前の新工場を建設し、本店を移転するとともに「太田塗装工業所」を設立した。それを機に大手家電メーカーとの取引も拡大し、石油ストーブやファンヒーターなどのほか、鋼製家具の塗装も請け負うようになった。

 

 現代表の太田義隆氏は近畿大学理工学部を卒業後、東大阪市の鋲螺(びょうら)製造の会社に就職し、東京で営業職として公私ともに充実した日々を送っていたが、父の体調不良をきっかけに、27歳の時に家業に戻る事となった。乗り気ではなかったそうだが、入社する代わりに営業がしたいと申し出たところ、社長からまずは現場で修行をするように言われてしまう。塗装から機械の運転まで全てをこなし、工場長のように現場を全て覚えた頃には10年がたっていた。

 

 39歳の時に父に代わって社長に就任したが、年商以上の借入を抱えている事を知ってがくぜんとする。リーマンショックもあって売上は急落、銀行への返済もままならない苦しい状況を打破すべく大改革に着手。仕入れ先を複数社に増やし相見積もりを取る、職人とも話し合い、給与体系を見直すなど、あらゆる効率性の向上を図って内部体制の強化を進める一方で、新規取引先の開拓も積極的に行った。沢山の販路を確保したことで選別受注もできるようになり、収益性も改善した。

 

 2017(平成29)年には五條市に10億円を投じて新工場を建設し、大阪府八尾市に2拠点あった工場を集約、自動粉体塗装機や6軸ロボットなど、設備投資も積極的に行い、現在では大手エアコンメーカーを主力先として事業基盤を確立している。

 

 またISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)も取得し、自社の活動による環境への負荷を最小限にする取り組みも行うなど、取引先や環境への配慮も怠らない。

 

 9年後に予定している後継者への事業承継に向けて、従業員のワークライフバランスをさらに高めていきたいとしている。(帝国データバンク奈良支店長 近藤穣治)

 

 

 

【メモ】

オオタ

五條市近内町1103の6

HP:https://k-oota.jp/

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