現代刀職展で最高賞を受賞した金田國真さん(34) - ときの人
福岡県出身。奈良県山添村の工房で日本刀の製作に打ち込む刀鍛冶。公益財団法人日本美術刀剣保存協会が主催する2024年度現代刀職展の作刀の部で最高賞の高松宮記念賞を受賞した。
高校時代に東吉野村の刀鍛冶・河内國平さんの著書「日本刀の魅力」を読み、仕事に誇りと自信を持つ師の言葉、刀鍛冶の世界にひかれ卒業と同時に弟子入り。住み込みで8年間修業。厳しい修業で諦めて去ってしまう人もいる中、師から「國」の名を受け継ぐ7人目の刀鍛冶となり16年に山添村に移住。自身の工房を構え独立した。
刀鍛冶の仕事は非常に工程が多い。強靭(きょうじん)でしなやかな刀を作るためには約1300度で鉄を打つ鍛錬(たんれん)を繰り返し、形状を整えた後、刃への焼き入れ。荒研ぎをして名を入れ研師をはじめとした職方へ託すまで、雑用を含め1人ですべてをこなす。1本の刀が作り始めから荒研ぎまでにかかる期間は3週間ほど。「刀は製作中のトラブルも多く、研ぎ上がってみないと出来の良し悪しが分からない。もし途中で傷が出たり、研ぎ上がっても出来に納得がいかないと最初からやり直すしかない」。10本作っても納得いくものができるのは1~2本だという。「出来が良くないものでも生活のためにと世に出すか、納得がいくものだけを選んで世に出すかで一流か二流かが決まる」という師の言葉を胸に妥協をしない。職人の魂が宿った刀が、初出品から10年目の出品で念願だった最高賞を受賞した。
「親方に教えられた通りの仕事をしていても、自分が作った刀と親方の作った刀は違う。出そうと思わなくても自然とにじみ出てくるものが個性ではないかと思う」という。「これからも賞を頂けるように丁寧な仕事を心がけて、いつかは一文字(いちもんじ)などの鎌倉時代の名刀に追いつきたい。それが職人としての自分を育ててくれた親方への恩返しだと思っている」。若き刀鍛冶の挑戦は続く。(伊藤波子)
かねだ・くにざね
1989年12月生まれ。家族は妻と半年前に生まれた長男。趣味は刀剣鑑賞、日曜大工。