高難易度ゴム成形技術に強み「根来工業」 - 奈良の自慢企業(19)
あらゆる工業製品の内部や外部で人知れず役立っているゴム製品がある。製造しているのは、奈良県田原本町にある根来工業。代表の根来幹二氏は3人兄弟として天川村で生まれ、林業を営んでいた父からは何かしら商売を興してほしいと言われて育った。そのため、染め物や眼鏡製造、飲食店などさまざまな仕事に修行に行って腕を磨いていた。
そうこうしているうちに、大阪のゴム製品製造業の下請けをしてみないかという話が舞い込んだため、一念発起して設備投資を行い、地元天川村で水道のパッキンを製造する事業を始める。試行錯誤を繰り返して依頼主の要望に応えていたが、設備投資の甲斐もむなしく、事業を興した主力の仕事がなくなってしまう。
新たな営業先開拓に奔走し、相談を受けるさまざまな受注に対応していくうちに実績とノウハウが積み上がっていった。大阪方面の得意先も増えてきた中で、利便性を考えて1989(平成元)年1月には天川村から現在の田原本町に本店を移転、事業規模の拡大に伴って92年4月に法人化し、現在の有限会社根来工業となった。その頃には大阪に本社を置いていた大手家電メーカーからの安定した受注を確保できるようになっていた。
ところが2008年に発生したリーマンショックによって国内経済も大きな影響を受け、当社も売上の40%近くを失ってしまう。そこからが根来工業の第2章の始まりとなる。
大手家電メーカー以外の得意先開拓に力を注ぎ、各種メーカーのお困り事を解決していくうちにゴムと異材質との一体成形や高難易度のゴム成形技術に強みをみいだす。金属メッシュとゴムの一体成形や、フッ素樹脂と合成ゴムと織布を合わせた4層構造のゴム製品など、高い技術を武器としている。また、防振ゴムや防水パッキンをはじめ、自動車の社内部品、パソコン関係、造船所のクレーン部品などアイテム数は600を数える。
23年12月には、従来のBtoBの仕事だけではなく、地元に還元して地元に必要とされる企業を目指し、橿原ツインゲート内に雑貨販売店「25Store」(ニコスト)をオープンした。こじんまりした店内の商品陳列はAIが考えたもので、輸入雑貨が所狭しと並んでいる。衝動買いとの戦いである。
(帝国データバンク奈良支店長 近藤穣治)
【根来工業】
田原本町千代339の5