質問「39歳男性 友人関係が減って、寂しさ虚しさを感じます」 - 「我知(がち)」ーお坊さんに聞いてみる(2023年11月1日)
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質問
39歳で30代最後です。独身です。昔は出かけたりしてよく遊んだ友人が最近なかなか遊べなかったり、友人関係が減ってしまいました。40代目前になるとこんなものなんでしょうか。時々無性に寂しさや虚しさを感じたりします。
(30代 男性)
回答
堀内 瑞宏(秋篠寺住職)
【我知なヒント=友人を見ることで新しい自分を見つける】
寺の参拝者の中で「今日の仏さんはいつもより笑顔に見える」など、いつもとの違いを語られることがあります。もちろん天気や時間で仏像に当たる光量の変化があり、見え方が変わるのは確かですが、それを踏まえても同じ仏像を見て受ける情感まで変わるのはなぜでしょう。
これは無意識に「この仏像にこのように自分を見てほしい」という見る側の思いが反映しているからだと考えられます。例えば「仏像の表情に癒やされた」とか「心が落ち着いた」と思えるとき、実は自分が落ち込んでいたことや心が荒ぶっていたことに逆に気づかされることがあるのです。鏡が姿形を映すように、仏像は心を映す鏡と呼べるかもしれません。
この考え方で「友人」を表現すると、「その人を知らざればその友を見よ」という諺(ことわざ)があるように、「友人」は呼ぶ人自身を映す鏡となり、さらに自身が「友人」を見ることで新しい自分を見つける鏡になるとも表現できます。
さて、これは俗世坊主の私見ですが、質問者様の場合、友人関係に虚しさを感じるのは、昔ながらの友人、即ち昔から変わらぬ自分だけに着目しているからではないでしょうか。それと同時に新しい自分を見つけられないことで寂しさが生じるのではないでしょうか。
当面の簡単な解決策は興味のあるボランティアや各種教室に入り親しい人を増やすことなのでしょうが、それに加えて覚えておいてほしいことがあります。それは今後も生まれるさまざまな悩みに対して、今回のような相談を自らに問うことです。
無意識に目をそらしている事にも改めて目を向けることができる「自問」もまた鏡となります。今回の質問を見つめ直し整えてみれば、去った友人たちは一足早く新しい自身と共に歩み始めた、と考え応援することもできるでしょう。
一坊主として、先人の背を追う貴方にも良き未来が築かれることを祈念させていただきたいと思います。
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【掲載日】
毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル