質問「空き家の実家に思い入れがあり片付けが進みません」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年12月17日)
【質問】
実家の片付けで悩んでいます。母は30年前、父は20年前に他界し、誰も住んでいない空き家の実家があります。結婚し、車で20分ほどの隣町に住んでいるため、月に何回かは風を通しに帰り、ホッと息つく場として使っていました。ですが、遠地に住むきょうだいにそろそろ片付けて、処分しようと提案され、思い出の多くある家が朽ちて悲しい気持ちになるよりは…いざ片付け! と取り組むものの、小中高の成績表をはじめ、父が趣味で作成していた家族新聞など、処分する判断に迷ったり、買い直しの効かない物の量に思考停止したりで、何にもはかどりません。両親と暮らした年月、実家で過ごした時間より、今の暮らしの時間の方が多くなったのだからと自身に言い聞かせても、なかなかに執着してしまいます。心の折り合いの付け方、ヒントをと思い応募いたします。よろしくお願いいたします。(50代女性)
【回答】五條 永教(金峯山寺 執行長)
【我知なヒント=ここはホッと一息、焦らずに】
今は空き家になってしまったとはいえ、ご実家ですから、ご家族との思い出は、家の中のあちらこちらにあふれるほどにたくさんあって当然です。玄関の戸を開けた瞬間の実家の匂い、その匂いをかいだ瞬間、今までピンと張り詰めていたものが緩んで、身心共に、ホッとした気持ちになれたなんてことはありませんか。
大抵の方は、家のことや、仕事のこと、子どものこと等々、挙げだしたら切りがないほどに、日常生活の中において、知らず知らずのうちに頑張り過ぎてしまっているんですよね。質問者さまは、ご年齢から考えても、恐らくは、そのような感じでいらっしゃるのではないのかなぁ~と、筆者の勝手な想像をもって、お答えさせていただこうと思います。
質問者さまが、月に何回かご実家にお帰りになって、ホッと息つく場としてお使いになっていることを考えますと、ごきょうだいのご意見もあるとはいえ、焦って処分することもないのではないかと思います。どうしても処分しなければならない時が来るまで、今のままにしておけばいいのではないかと思います。ホッとできる場所は絶対に必要だと思います。
本当に片付けなければいけない時は、いつか来ることでしょう。その時はその時のことで、その時に考えればよいのだと思います。執着してしまうことなんて、ごくごく普通のことです。実家ですから、執着しない方が不自然です。執着してしまうことによって、質問者さまは心の充電をされているようにも感じます。ですから、もっともっとご実家に執着されて、ごきょうだいに遠慮なさらずに、今よりも自由な気持ちになられて、心の充電を存分にされたらいかがでしょうか。
ここからは少し現実的なこととなります。このご実家の名義が何方なのかということです。名義が質問者さまご本人であれば、これはあくまでも割り切って考えた場合ですが、ご実家のことは、どのようにでも、自身の思うままにすればよいということになります。しかしながら、ごきょうだいの何方か、あるいは、何方かとの共有名義であったりした場合ですと、これは慎重に話を進めなければならないということになるでしょう。
今回のご質問だけの情報では、その辺りのことが分かりかねますので、お答えするのが難しいところもあるのですが、とにもかくにも、焦らずに、ごきょうだいともよくお話しをされつつ、ご自身の気持ちも大切になさって、これからもご実家にお帰りになって、ホッと一息ついていかれたらよいのです。
そうこうしているうちに、心の折り合いもついてきますから、ご安心を。心の折り合いなんて、自分自身でつけられるものではありませんから。質問者さまとそのごきょうだい、それぞれのご実家への思いが、素晴らしい結果となって円満成就いたしますことを、本紙面をお借りし、心よりお祈り申し上げる次第です。
【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】
奈良の僧侶が悩み相談や質問に答えるコーナー。お坊さんに相談したい、 仕事や人間関係、恋の悩み、人生相談や信仰・仏教の教え、お寺への質問などが対象です。お坊さんへの質問を募集しています。採用は弊社と回答者で判断し、掲載の有無や掲載日についてお答えすることはできませんのでご了承ください。
【回答者】
興福寺 辻 明俊さん
金峯山寺 五條 永教さん
秋篠寺 堀内 瑞宏さん
宝山寺 東條哲圓さん
【掲載日】
毎月第1、3水曜日「暮らし」のページ・奈良新聞デジタル