「大和未生流」第4代家元に就任した須山法香斎さん(48) - ときの人
代々生け花を志す家に生まれ、幼い頃から花を見て育った。跡を継ぐのはまだ先だと思っていたが、先代である父が脳梗塞で急逝。「会社にも華道にもいい加減な対応をしたくない」と勤めていたIT関連会社を辞め、家元として専念する決意を固めた。
父はよき理解者であり相談相手だった。生け花を広めることを第一に考え、利益を顧みない姿勢を尊敬していた。今は、初代が残した本を読むことで、同じく熟読しただろう父の心情を思い、寂しさの中にも安心を得る。
「大和未生流」の生け花は、豪華絢爛(けんらん)ではなく花の数も少ない。無駄を省いたシンプルさは一輪の花をいっそう引き立てる。初代家元が確立した自然を慈しむ心を表現し、花を目にした時にほっと安心できる生け花のスタイルを変えずに今日まで引き継いでいる。「伝統の精神を守り、魅力を伝えていきたい」。
現在は、文化サロンや学生の授業を引き継ぎ、教えながら学ぶ日々。今後は「師範の免許を持つ人に声を掛け、教室を会社や病院、福祉施設などに広げて大和未生流の花を多くの人に見てもらえる場をつくりたい。インターネットの活用も考えていく」と新たな取り組みにも意欲を見せる。
家族は母、妻、長女(5)、次女(1)。「子どもの遊びに付き合うのは大変だがかわいい」と目尻を下げる。
心に安らぎを与える自然美を伝えるため、花と向き合う日々を誓う。 (伊藤波子)
すやま・ほうこうさい
1974(昭和49)年4月、奈良市生まれ。関西学院大学大学院経済学部経済学研究科修了。IT関連会社の営業社員などを経て2022年8月1日、大和未生流の第4代家元に就任。趣味は読書、釣り、スポーツ観戦。